日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい！WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー！

今回紹介するのは、『スペシャル』

『スペシャル』第1巻
平方イコルスン リイド社 ￥778+税
（2016年4月11日発売）

いたって普通に見えるとある高校の教室に、常にヘルメットをかぶり続ける女子がひとり。
転校生の葉野さんは、ヘルメット女子・伊賀ころもと隣の席になり、「？？？」の視線を注ぎ続ける。

ころもについてわかったのは、彼女が異常な怪力の持ち主だということ。
普通のシャーペンは気をつけて持ってもひねりつぶしてしまうし、自動車くらいは片手で押せるし、そんなわけで体育も常に見学だ（死人が出るから!?）。

しかし、本作は“怪力女子のドタバタコメディ”にあらず。“たまたま特殊な能力を持った子がいる高校の日常”が淡々と描かれるコメディだ。
ころもの能力は非現実的なものだが、ほかのみんなもちょっとずつクセがある。いつも豆を食べてる会藤くん、何かと人をつねる無口な筑前さん（これがコミュニケーション手段？）。
葉野さんは、転校生が来ようと“通常運行”な級友たちになんとん～くなじんでいき、気づくと結局ヘルメットの理由もわからないまま、ころもと仲よくなっていたりするのだった……。

よくよく見れば、普通の子なんていない。だれでも大なり小なり変わってるところ、というのはあるものだ。
他人の普通じゃなさを騒ぎたてるでもなく、はれものに触るようにするでもなく、受けいれている本作の“日常”はなんだかとても居心地がいい。

本作はリイド社のWebマガジン「トーチweb」連載中の作品である。リイド社といえばだれもが『ゴルゴ13』（さいとうたかを）を筆頭に重厚なオトナのマンガを思い浮かべるだろうけれど、「トーチweb」からはエッジィでフレッシュな注目作が続々と誕生している、『みちくさ日記』（道草晴子）、『有名すぎる文学作品をだいたい10ページくらいの漫画で読む』（ドリヤス工場）、『太郎は水になりたかった』（大橋裕之）、『Gのサムライ』（田中圭一）etc.……ぜひチェックしてみてほしい。

＜文・粟生こずえ＞
雑食系編集者＆ライター。高円寺「円盤」にて読書推進トークイベント「四度の飯と本が好き」不定期開催中。
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