日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『うちのクラスの女子がヤバい』
『うちのクラスの女子がヤバい』第1巻
衿沢世衣子 講談社 ¥620+税
(2016年4月15日発売)
1年1組は、どこにでもあるごく普通のクラス。唯一、ほかのクラスと違っていたのは、女子生徒の多くが、「思春期性女子突発型多様可塑的無用念力」略して「無用力」を持っていることだった――。
「思春期の過剰なエネルギー」というのものは、青春モノを描くうえでのキモであり、醍醐味でもあるが、本作はそれを「無害かつなんの役にも立たない思春期限定の超能力=無用力」というオリジナル設定の超能力に変換して描いているのが、ユニークかつうまい!
心拍数が上がってドキドキすると透視能力が発声し、服はおろか肌の下まで透けて見えてしまう少女、イライラすると指がイカの触手みたいになる少女、テンパってくるとモスキート音を発する少女……などなど、どの能力もヘンテコ極まりないのだが、周囲の人々(先生やクラスの男子)は、そんな彼女たちを腫れもの扱いすることはなく、むしろ、その歪さを愛をもって受け入れている。
そんな奇妙かつゆるーい世界観がなんとも心地よく、現実もそうあってほしいよなあ……と願わずにいられなくなる。
どの女の子(「男の娘」含む!)も、思春期特有の漠然とした悩みや苛立ちを抱えて悶々としているのだが、その様子がまたキュートでほっこり。
このまま、SF(少し不思議)な日常がまったり展開していくのも素敵だが、謎の監視組織や謎の4頭身キャラの級長ウィルコさんなど、伏線と思しきネタも仕込まれているので、油断は禁物。
まだ描かれていないほかの女子の無用力も気になるしで、早くも第2巻が待ち遠しい!
<文・井口啓子>
ライター。月刊「ミーツリージョナル」(京阪神エルマガジン社)にて「おんな漫遊記」連載中。「音楽マンガガイドブック」(DU BOOKS)寄稿、リトルマガジン「上村一夫 愛の世界」編集発行。
Twitter:@superpop69