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5月13日は「巌流島の決闘」が行われた日 『ムサシ』を読もう! 【きょうのマンガ】

2016/05/13


365日、毎日が何かの「記念日」。そんな「きょう」に関係するマンガを紹介するのが「きょうのマンガ」です。

5月13日は巌流島の決闘が行われた日。本日読むべきマンガは……。


MUSASHIbunko_s01

『ホーム社漫画文庫 ムサシ』第1巻
小池一夫(作) 川崎のぼる(画) ホーム社 ¥552+税


きょうは巌流島の決闘が行われた日である。

宮本武蔵の生涯を綴った『二天記』によると、慶長十七年四月十三日(1612年5月13日)、関門海峡にある小島で武蔵と佐々木小次郎が決闘に及んだ。
この無人島の正式な名称は、当時も現在も「船島」だが、小次郎が「巌流」という剣術の流派を名乗っていたことに由来して「巌流島」と呼ばれるようになった。
武蔵がこの決闘に勝利したのは、誰もが知るところだろう。

巌流島の決闘を題材にした作品は枚挙にいとまがない。
これまで数多くの作家の手によって描かれてきたが、その大半は吉川英治の小説『宮本武蔵』にもとづいている。

そもそもこの小説『宮本武蔵』自体、吉川英治が直木三十五との論争の末、武蔵が兵法家としてどれだけ優れていたかを証明するために執筆されたものだ。
武蔵の幼友だちの又八、武蔵を慕うヒロインのお通、武蔵と決闘する武芸者(一部除く)など登場人物のほとんどは、吉川英治が創作した架空の人物である。
そのため、後世の武蔵作品のほとんどは、吉川英治『宮本武蔵』の強い影響下にあるもの(もしくは二次創作)といえる。

そのように固定化した宮本武蔵像を打破しようと描かれた意欲作が『ムサシ』だ。

原作は『子連れ狼』『御用牙』などを手がけた劇画原作の大家・小池一夫(当時は「一雄」名義)、マンガは『巨人の星』『いなかっぺ大将』などで知られるヒットメイカーの川崎のぼる。
このドリームタッグで、いわば「打倒・吉川英治」に挑んだわけである。

本作の主人公・ムサシは、なんと野武士(のぶせり)だ。
戦災孤児たちの集団を率い、農村を襲って兵糧米を略奪しようと画策する。

とはいえ、ムサシはまだ少年。星飛雄馬(ほし・ひゅうま)のように精悍(せいかん)な顔つきはしていても、風大左衛門のような体型が示すように(?)根は、ぼくとつな田舎の農民である。村人を斬るような非道な真似はできない。
そんな甘さから村人の仕掛けた罠にはまり、仲間たちは騎馬武者に斬殺されてしまう。ひとり取り残されたムサシは、村娘のおつうを人質にとって逃避行へ。その道中、ムサシは鍛冶師のコジローと出会う。

仲間を殺されたムサシと、両親を殺されたコジロー。ともに侍に恨みを抱く者同士が協力し、山にこもって刀づくりにいそしむ。
やがて2人は長刀をつくりあげるが、そこでコジローが「試し切り」と称し、通りすがりの浪人に勝負を挑む。その相手が、誰あろう佐々木小次郎であった。
そして小次郎を倒したコジローは、みずからが佐々木小次郎と名乗るようになる。

吉川英治版『宮本武蔵』では又八が佐々木小次郎になりすます場面があるが、なりすますのが又八ではなく、しかも本家の小次郎をしのぐ剣豪へと成長していくところも本作の特徴である。

やがてムサシとコジローは袂(たもと)を分かち、それぞれ武者修行へと旅立つ。
そして2人は、長く過酷な修羅の道の果てに、巌流島で相まみえることになる。

新解釈で宮本武蔵像に挑んだ本作『ムサシ』では、ムサシとコジローはどのような経緯で巌流島に到ったのか。
そこに注目してもらいたい。



<文・加山竜司>
『このマンガがすごい!』本誌や当サイトでの漫画家インタビュー(オトコ編)を担当しています。
Twitter:@1976Kayama

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