日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『サイボーグ009 VS デビルマン -BREAKDOWN-』
『サイボーグ009 VS デビルマン -BREAKDOWN-』
石ノ森章太郎、永井豪(作) 吉富昭仁(画) 講談社 ¥600+税
(2016年4月8日発売)
日本マンガ界が誇る二大巨匠・石ノ森章太郎、永井豪の代表作がクロスオーバーをとげるという衝撃的なアニメ企画『サイボーグ009 VS デビルマン』。
本企画のコミカライズ展開が吉富昭仁の描く『サイボーグ009 VS デビルマン -BREAKDOWN-』だ。
吉富昭仁といえば、近年こそ『地球の放課後』や『スクール人魚』などの美少女を主軸としたファンタジックでキュートな作風として知られているものの、もともとは『ローンナイト』や『EAT-MAN』など、緻密な画力によるダイナミックな破壊描写を売りとしたヒロイックアクション作品で名をはせた作家でもあり、本作への抜擢も納得の人選と言える。
『BREAKDOWN』は、荒廃した未来世界に召喚されたデビルマンとゼロゼロナンバーサイボーグが戸惑いながらもお互いの信じるもののために激突してしまう……というアニメ版とは異なるオリジナルストーリー。
原作の予備知識なく読んでも楽しめるが、ところどころに原作マンガやアニメ版とのつながりを想起させる符帳がちりばめられており、旧来からのファンもニヤリとさせられるだろう。
アニメ版『サイボーグ009(1979)』の主題歌「誰がために」を流しながら読むと雰囲気が盛りあがるので、個人的にオススメだ。
ともすれば押しつぶされそうなほど巨大な2作品だが、重圧に負けず見事に料理しきる手際はさすが熟練作家のひと言だ。
あまりにも壮大なスケールで語られる物語であるために、単行本1冊で完結してしまうことがいささか惜しくもあるが、そこは求めすぎというものかもしれない。
<文・一ノ瀬謹和>
涼しい部屋での読書を何よりも好む、もやし系ライター。マンガ以外では特撮ヒーロー関連の書籍で執筆することも。好きな怪獣戦艦はキングジョーグ。