『EAT-MAN THE MAIN DISH』第1巻
吉富昭仁 講談社
(2014年10月9日発売)
ネジや鉄板などの無機物を「食べる」ことで様々な物を作り出す能力を持つ、正体不明の青年・ボルト・クランク。
そのあざやかな手並みから「世界一の冒険屋」とうたわれるボルトは、依頼者たちが抱える難事件を次々と解決していく……。
本作は、吉富昭仁の代表作『EAT-MAN』の、約10年ぶりの新シリーズだ。
近年の吉冨氏は『BLUE DROP』シリーズや『地球の放課後』など、思春期の少年少女たちの心の機微をテーマとした作品を多く描いていたため、『EAT-MAN』のようにストレートな少年向け冒険活劇はもう描くことができないのでは……と考えていた読者も多かったのではないだろうか?
しかし、本作を読めばそれが杞憂であったことがわかる。魅力的な世界観、寡黙でありながら不敵なボルト、謎に満ちたサブキャラクターたち……。
当時の雰囲気をたもちながらも、もともと完成度が高かったイラストやストーリーはさらなる進化をとげており、懐かしさを感じさせながらもただの懐古趣味には留まらないフレッシュな魅力に満ちている。まさに「メインディッシュ」の名に恥じない一作だ。
新章のスタートにあたり、物語の舞台を一変させながらも前作からの関連を匂わせるセリフが随所に散りばめられており、旧作ファンもニヤリとさせてくれるところも心憎い。
<文・一ノ瀬謹和>
涼しい部屋での読書を何よりも好む、もやし系ライター。マンガ以外では特撮ヒーロー関連の書籍で執筆することも。好きな怪獣戦艦はキングジョーグ。