日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『スメラギドレッサーズ』
『スメラギドレッサーズ』第4巻
松本豊 秋田書店 ¥429+税
(2016年5月6日発売)
なんの変哲もない女子高生が、“ドレス”と呼ばれる戦闘服に着替えることで、とんでもない強さを手に入れる!
ただし、着替えに許された時間は「20秒」だけ……。
「週刊少年チャンピオン」の新人賞出身作家・松本豊が描くバトルヒロイン戦記『スメラギドレッサーズ』。
マジメで融通がきかず、幼稚園の頃以来、友だちもいない高校2年生の風紀委員長・三ノ宮かなでは、ある日「世界てらす子」と名乗る大福の妖精(!?)のような謎生物と出会い、友だちになる。
てらす子はじつは世界征服組織「ツクヨミ」の施設によって生み出された生物。てらす子を狙い、次々現れる刺客たちと戦うためにかなではツクヨミによって作られた戦闘服、通称“ドレス”を受け取ってしまう。
このドレスは身体能力を超強化し、その種類によって様々な特性を持った武器を扱えるものの、20秒以内に着替え(※手動)を終えられないと真の力が発揮できないうえに、“ドレスルーム”が解放されて周囲に着替え中の姿を見られてしまうという重大な欠点があるのだ。
連載初期は、着替えを見られたくないかなでの嫌がりと周囲の男子たちの好奇の目線が交差してツクヨミ相手に本気で戦うどころではなく、着替えで下着姿をさらしてしまう女子高生のお色気コメディ……の様相を見せていた。 しかし、じつはそれも「スメラギドレッサー」として戦うヒロイン・かなでが乗り越え、強くなるための困難のひとつにすぎない。
かなでは学校生活と戦いの繰りかえしのなかで自分に憧れるカメラ少女の芽伊、学校の人気者でサッカーが得意なツカサなどと出会い、友だちになっていく。
そもそも、世界を守るために悪の組織と戦う気など最初からなかったかなでがドレスを着た理由は、友だちであるてらす子を追手から守るため。友だちが増えていくということは、かなでがさらに戦う覚悟を決めなければいけないということでもあった。
戦闘を繰りかえすことでドレスが持つ特性の活かし方や効果的な着替えの方法を理解し始め、「お色気コメディ」の空気はしだいに影をひそめ始める。
こうして『スメラギドレッサーズ』という作品の真価は、連載が進むほどに発揮され始めた。
第4巻では、ツクヨミの幹部として立ちはだかる二重人格の少女・詩葉院まりあ(詩葉院ゆりかご)との戦いに決着がつく。
正体を隠してかなでと友だちになったゆりかごと、そんな彼女を想うかなでのことを偽善と叫ぶまりあの「2人」を救うため、かなでが取った戦い方とは……。
単なる力押しでも、そしてきれいごとでもない、かなでの「強さ」が描かれている。
この作品、それぞれ特性の違うドレスによる戦い方や、先々のことまで考えて組み立てられた伏線の多いストーリー展開など、かなり理づめで考えられていることがうかがえる。
それでいて説教くささを感じさせないのは、物語は理づめで練られていても、あくまでヒロインのかなでたちは“心”で動いているからだろう。
目の前の、たったひとりの友だちを救うために、恥じらいも強大な敵との戦いも乗り越える。“普通”の女子高生がどんどん頼もしく、カッコよく見えてくる。
戦う手段が非現実的でも、戦う理由が等身大なのも、この作品の魅力のひとつなのだ。
……と、バトルの熱さもヒロインたちの友情もかなり盛りあがってきたところだったが、この第4巻で物語は完結。
残念なかたちでの終了を迎えた作品ではあるものの、ヒーローもの・変身ヒロインものの熱さを求めている方には全4巻、ぜひオススメしたい。
そして、あわよくば続編につながることを期待したい!
<文・ササナミ>
「雑食商店街3373番地」というマンガ感想メインのブログを書いております。ふだんは書店で働いています。
渡辺航先生ファンで、『弱虫ペダル』第1話掲載号からの「週刊少年チャンピオン」ファンです。