365日、毎日が何かの「記念日」。そんな「きょう」に関係するマンガを紹介するのが「きょうのマンガ」です。
6月2日は路地の日。本日読むべきマンガは……。
『伊藤潤二傑作集6 路地裏』
伊藤潤二 朝日新聞出版 ¥1,000+税
うちへの帰り道、スマホなどに夢中になりすぎて道を間違ったことはないだろうか?
たしかに近所なのだが見たこともない家、そして見たこともない路地。
見慣れた空間が一瞬にして異界へと変わる、その寂寞感と恐怖感……。
本日6月2日は、6(ろ)・2(じ)の語呂合せによる「路地の日」。長野県下諏訪町の有志による「路地を歩く会」が日本記念日協会に申請して制定した記念日だ。 路地のよさを見直そうというテーマの日で、今年は発足30周年を迎えるとのこと。 おめでとう、路地の日。
路地の狭さがもたらす閉塞感に目をつけたのが漫画家・伊藤潤二。
1992年に「月刊ハロウィン」誌で発表された『路地裏』という彼の短編では、下町の路地にある下宿に引っ越してきた青年・石田が、下宿の隣に不思議な閉鎖空間を見つけたことで体験する恐怖を描く。
そこは袋小路になった路地の出口を高い塀で閉ざした、だれも出入りできない空間だったが、石田は夜ふけにそこから、子どもたちが遊んでいるらしい声を、たしかに聞く。
そしてその声はいつしか、その下宿の娘・忍の名前を呼ぶ不気味なうめき声に変わるのだった……。
下宿の美しい娘、夜な夜な聴こえてくる子どもの声、その路地でかつて起きたという殺人事件……。上質のホラーでありながらどこかしらにユーモアと妖艶さを隠し持つ伊藤潤二ワールドのお膳立てはそろった。
2011年に刊行された『伊藤潤二傑作集』にも所収の傑作。
この機会にぜひ、お読みいただきたい。
<文・富士見大>
編集・ライター。特撮のあれこれやマンガのあれこれに携わる、動物メカ愛好家。『別冊宝島2394 仮面ライダー』や、ただいま絶賛発売中の『別冊宝島 「仮面ライダー」伝説の10人ライダー総特集』にも参加しています。