『ハカイジュウ』第13巻
本田真吾 秋田書店 \419+税
(2014年07月8日発売)
近年、再び怪獣ものがブームだ。映画界を見ても、2013年の『パシフィック・リム』に続き、今夏は復活したハリウッド版『GODZILLA ゴジラ』が大きな話題を集めている。
それよりも一足早く日本のマンガ界に登場していたのが、「月刊少年チャンピオン」で2010年から連載が始まった、本田真吾『ハカイジュウ』だ。ただ、13巻をもって第1部が完結した本作は、ひと言で怪獣ものとくくりきれる作品じゃない。
ある日突然、東京立川市を襲った大地震。バスケの練習のため、体育館にいた高校生の鷹代陽は命こそ取り留めるが、今度はどこからともなく現れる未知の不気味な生物に襲われる。学校を逃げ惑う陽。
この時点では学校を舞台にしたパニックものだが、ここからが本当の「破壊」の始まりだ。
やがて巨大な生物が現れて、学校は崩壊。さらに巨大生物は数も種類も増え続け、立川市自体が壊滅に追い込まれる。
国によって封鎖させられた立川から、なんとか脱出する陽と生徒会長の白崎奈央たち。
一方、新宿では、陽の幼なじみの藍沢未来と、陽の親友で行方知れずとなっていた瑛士の弟・久遠絢士(くどうけんじ)が、超巨大生物と軍隊の戦いに巻き込まれていた。
そう、謎の生物たちが出現していたのは立川だけでなく、新宿、いや、東京中に出現していたのだ。
この立川編、新宿編を経て、9巻からの最終章は、絶望と希望が入り混じった、意外な展開が描かれる。
未見の人のために最終章の内容は伏せるとして、個人的な感想としては、秘宝を探す冒険物語だと思っていたら、宇宙規模の壮絶な一大バトルだった『DRAGON BALL』の展開並の驚き。
そんな等身大の高校生活が突如として破壊される恐怖を味わいたい方は、ぜひ1巻ずつ読み進めてほしい。恐怖のなかでの出会いと別れ、人間の醜さと気高さ、破壊と死。その先にたどり着くものとして、最終章で提示された展開は意外でもあるが、大いに納得でもある。
「逃げて生き延びる」さまが描かれてきた本作だが、物語は最終章で「戦って生きていくこと」に集約されていく。
『ハカイジュウ』は怪獣ものであると同時に、成長と戦いを描いた確固たる王道の少年マンガなのだ。
『進撃の巨人』や『テラフォーマーズ』は読んでいても、本作は知らなかったという人はぜひ。2作に並ぶ不気味さ、壮絶さ、そして戦いのドラマを味わえるはすだ。
<文・渡辺水央>
マンガ・映画・アニメライター。編集を務める映画誌「ぴあMovie Special 2014 Summer」が発売中。DVD&Blu-ray『一週間フレンズ。』ブックレットも手掛けています。