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『このマンガがすごい!comics ナニワ銭道 情けはゼニのためならず編』青木雄二プロダクション(案) 西田真二郎(作) 及川コウ(画) 【日刊マンガガイド】

2016/06/20


日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!

今回紹介するのは、『ナニワ銭道 情けはゼニのためならず編』


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『このマンガがすごい!comics ナニワ銭道 情けはゼニのためならず編』
青木雄二プロダクション(案) 西田真二郎(作) 及川コウ(画) 宝島社 ¥690+税
(2016年6月20日発売)


岡山の田舎で役場に勤めていた青年・青威雄一郎は、漫画家になる夢を抱えて大阪に移り、しけたキャバレーのボーイ仕事で安月給に耐えつつ投稿用の原稿を描きためていた。
そんなおり、金銭に対して理詰めでガメつい年上の同僚・小藪蛙次が会社の立ち上げ計画を打ち明け、青威を誘ってくる。

小藪が設立するのは、大なり小なり問題を抱える上場企業の不祥事を調べあげる信用調査会社。
大阪ミナミのぎらつく繁華街を舞台に、泥臭い欲望とトラブルの渦巻く金融修羅場の数々が青年をきたえていく……!

というのが、「アサヒ芸能」で連載された『ナニワ銭道』の大筋。
社会派+金融業界マンガの金字塔『ナニワ金融道』オルタナティヴ版とでもいうべき立ち位置で、今は亡き青木雄二の作風・画風を元アシスタント勢が直球で受け継いだシリーズだ。

「このマンガがすごい!comics」では、そこからよりすぐりのエピソードを取り出し、2015年の『神も仏もゼニ地獄! 編』以来コンスタントに傑作選を出している。
その新刊が、このたび発売された、全2部構成の『情けはゼニのためならず編』である。

まず第1部は「濡れ衣に追い銭編」。
青威・小藪と親しいロシア人ホステスが、愛人関係にある会社社長の自宅から大麻栽培の物証が出てきたとばっちりで逮捕される事態が発生。
社長自身も濡れ衣を訴えており、企業のお家争いにからむ情報を得た小藪はゼニの匂いをかぎつけ、くらいついていく。

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問題がおさまったあと、小藪がしたたかな金儲けのしくみを明かすエピローグが本作ならではの持ち味をにじませて心憎い。

そして第2部は「国宝争奪花街潜入編」。
鑑定の是非をめぐる骨董品店どうしのもめごとを発端に、元総会屋の介入、さらにその黒幕の“財団”が盗んだ国宝級の掛け軸の奪還作戦へとスケールアップしていくうねりが見どころだ。
美術品の売買を利用した裏金ロンダリングなど、社会の裏側と金融を組み合わせた本作ならではの豆知識もさりげなく挟まれていておもしろい。

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収録話のどちらもサスペンスドラマ的な趣向を楽しめるが、特に第2部は途中から舞台を京都へ移して花街の芸妓さんたちが展開に関わってくることもあり、その趣がいっそう濃厚になっている。

描かれる事件は本刊収録ぶんだけできっちり解決しているので、お手に取りやすい構成なのもいいところだ。



<文・宮本直毅>
ライター。アニメや漫画、あと成人向けゲームについて寄稿する機会が多いです。著書にアダルトゲーム30年の歴史をまとめた『エロゲー文化研究概論』(総合科学出版)。『プリキュア』はSS、フレッシュ、ドキドキを愛好。
Twitter:@miyamo_7

単行本情報

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