365日、毎日が何かの「記念日」。そんな「きょう」に関係するマンガを紹介するのが「きょうのマンガ」です。
6月22日はかにの日。本日読むべきマンガは……。
『蟹に誘われて』
panpanya 白泉社 ¥1,000+税
6月22日が「かにの日」。かに道楽が1990年に制定したのがはじまりだ。
かに道楽によると、50音の6番目である「か」と22番目の「に」を合わせてかにの日。また、蟹座は6月22日から7月22日生まれの人をさすことも理由だそう。
「蟹に関連したマンガ」。………これは難しい。
海産物がモチーフになっている作品といえば『侵略! イカ娘』があるが、蟹……!!!
しかし唯一、蟹への想いにこたえてくれるマンガがある。panpanyaの『蟹に誘われて』だ。
同作は「楽園」発表作、同人誌発表作品や描きおろしなど計18篇を収録した作品集。
最初に掲載されている『蟹に誘われて』では、主人公がいつもの通学路を歩いていると大きな蟹に遭遇する。今晩のおかずにすべく、あとを追う主人公。いったいどうなってしまうのか……。
蟹に誘われて主人公は、初めて通る道や、近所のはずなのに新鮮に感じる風景に気づく。
「魚の話」では人語をしゃべる魚が登場し、「パイナップルをご存知ない」ではパイナップルがどうやって生えるのか探しにいく。特に、主人公が見知らぬ街で迷子になる「方彷の呆」はpanpanya作品と読者の関係がそのまま描かれていると感じる。
日常に突如として現れた異物、もしかしたら現実のなかの夢なのかもしれない「それ」、いや自分が異世界に迷いこんでしまったのかもしれないという戸惑い。
どのお話を読んでも、うつつと夢に引かれた黒い線に水滴をたらしぼんやりさせられる。自分がどこにいるのかわからなくなってしまう。心地よい夜のお散歩に出た気分になる。
『蟹に誘われて』もこれまでの作品と同様、装丁をpanpanya自身が手がけている。
カバーをめくった本体表紙の石垣の不思議な感触。蟹がこの石垣をのぼっていそうだ。本体表紙をさすさすと触れているうちに「もしかしたら蟹も心地いい場所をこうしてのぼってくるのかも」。
蟹に誘われて、蟹の気持ちになってしまった。
<文・川俣綾加>
フリーライター、福岡出身。
デザイン・マンガ・アニメ関連の紙媒体・ウェブや、「マンガナイト」などで活動中。
著書に『ビジュアルとキャッチで魅せるPOPの見本帳』、写真集『小雪の怒ってなどいない!!』(岡田モフリシャス名義)。
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