日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『こえ恋』
『こえ恋』第1巻
どーるる 双葉社 ¥740+税
(2016年6月11日発売)
その人の持つ何か、たったひとつでいい。
強烈に惹きつけられて「どきどき」してしまったら、それはもう恋が始まるサインでしかない。
女子高生である主人公・吉岡ゆいこの場合、それは彼の「こえ」だった。
ただ話が少々ややこしくなるのは、「こえ」の主である松原くんが、明らかに通常と違う一点を持っていること。
彼は常に「紙袋」をかぶって学校に来ている。
表情の変わらない紙袋は、様々な憶測を呼び、波乱を生んでいく。
何よりおもしろいのは、ゆいこにとってはその紙袋が恋の障害にならないということなのだ。
そのあたりに、このマンガの真髄があるのかもしれない。
マンガ・ノベルアプリ「comico」で連載中、大人気マンガの『こえ恋』。
ついにこの夏ドラマ化も決定した、まさに旬の作品だ。
高校入学してすぐに、風邪で1週間寝こんでしまったゆいこ。
そんなゆいこのもとに、クラスメイトから電話がかかってくる。
電話の主は、クラス委員長の松原くん。
その声にゆいこは心を奪われ、まだ風邪も治りきらないうちに無理を押して登校する。
そんなゆいこを助け、保健室に連れて行ってくれたのも松原くんだった。
紙袋をかぶっていても、その「こえ」が、彼だと教えてくれる。
手際もよくまじめで面倒見もいい彼に、ゆいこはどんどん惹かれていくけれど……。
第1巻では、ともかく謎は謎のままであり、主要キャラも徐々に登場しつつあるという段階のゆっくりした展開だ。
松原くんの紙袋をめぐって、ゆいこの親友であるあき、松原の親友である優一、そして堅物の生徒会長・兵頭などがもめるなか、ゆいこと松原くんの間にはふんわりとした空気が流れ続けている。
それをさらに、フルカラーの優しい色使いと丁寧なペンタッチが助け、ほんわりとした恋がおだやかに展開していくのを読者は見守ることになる。これがなかなか楽しいのだ。
最大の謎である松原くんの紙袋の中身。
それを知らずして、ゆいこの恋はどこまで進んでいくのか。
続刊が待ち遠しいことこのうえない。
<文・山王さくらこ>
ゲームシナリオなど女性向けのライティングやってます。思考回路は基本的に乙女系&スピ系。
相方と情報発信ブログ始めました。主にクラシックやバレエ担当。
ブログ「この青はきみの青」