365日、毎日が何かの「記念日」。そんな「きょう」に関係するマンガを紹介するのが「きょうのマンガ」です。
6月28日は貿易記念日。本日読むべきマンガは……。
『講談社漫画文庫 ヨコハマ物語』第1巻
大和和紀 講談社 ¥650+税
6月28日は貿易記念日。
ペリーが浦賀に来航してから6年後……1859(安政6)年のこの日、江戸幕府がロシア・イギリス・フランス・オランダ・アメリカの5カ国に対し、横浜・長崎・箱館(函館)での自由貿易を許可することを公布した。
このことから、通商産業省(現在の経済産業省)が1963年に制定した記念日である。
『ヨコハマ物語』は、維新後の港町・横浜を舞台とした物語。かの『はいからさんが通る』で大正浪漫の世界を描いた大和和紀の作品とあらば、そのクオリティは疑う余地がないだろう。
時は1875(明治8)年、身寄りをなくした11歳のヒロイン・卯野は横浜の貿易商・叶屋に引き取られる。
甲州の村に住んでいた彼女にとっては見るものすべてが珍しい。船、蒸気機関車、馬車、西洋風の建物……加えて叶屋には取引先の“異人さん”がしょっちゅうやってくるのだ。
さて、卯野は、この家のお嬢様・万里子づきの小間使いの役をおおせつかうのだが、この万里子がクセ者だ。
黙っていれば可憐でいたいけな深窓の令嬢なのだが、中身は知能犯のいたずら好き。花嫁修業よりも勉強したい、いずれは兄をさしおいて貿易商を継ぎたいと願う、当時としてはなかなかのはねっかえり。
当初は異国文化にとまどうも好奇心旺盛な卯野を、万里子はすぐに気に入り、2人は身分の壁を超えて親友のような姉妹のような関係に。
ともに居留地の外国人が開く私塾に通い、英語をはじめとする勉強に励み……少女から娘へと成長していく2人の恋と青春をたっぷりと描いた大河ロマンだ。
それにしても大和和紀の歴史モノの“語り部”たる視線のなんとみずみずしいことか。様々な異文化に触れ、来たるべき新時代をわたっていこうとする少女たちの瞳に、ときめきが止まらない。
「そんな時代に生まれてみたかったなぁ」なんて思ってしまうけれど……いや、憧れる前に、海を目にした時に「この海は世界につながっている」という事実を常識としてしか捉えられなくなっていることを私たちは今一度認めるべきなのだろう。
人に、社会に、青春をもたらすのは挑戦する心である!
<文・粟生こずえ>
雑食系編集者&ライター。高円寺「円盤」にて読書推進トークイベント「四度の飯と本が好き」不定期開催中。
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