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【きょうのマンガ】9月1日は防災の日! おすすめするのは『はいからさんが通る』!

2014/09/01


HAIKARAsan_s04

『はいからさんが通る』第4巻
大和和紀 講談社 \650+税


9月1日は「防災の日」。それが、1923(大正12)年のこの日に起こった関東大震災に由来することを知らない日本人がまずいないのではないか。
神奈川県西部を震源とする関東大震災はマグニチュード7.9。発生が11時58分と昼食の時間帯だったために火災の被害が大きく、死者・行方不明者は約10万5千人を数えている。首都東京も壊滅的な打撃を受け、一時は遷都さえ話にのぼったという。

語り継がれる関東大震災の記憶とともに……少女マンガ好きならそこに、ウェディングドレス姿で廃墟と化した街をさまよったヒロインを思い起こさずにはいられないだろう。花村紅緒、大正時代の東京を舞台としたラブコメディ『はいからさんが通る』の主人公である。
良妻賢母を目指す教育が行われる女学校に通うものの、お作法や裁縫は大の苦手。はかま姿にブーツで自転車を乗りこなし、剣道の腕にも自信あり。そんな紅緒の親友・環も、フェミニズムの祖・平塚らいてうの言葉を引用して旧態依然とした先生をやりこめたりと、痛快だ。

そんな紅緒だから、親の決めた婚約者である陸軍少尉・伊集院との縁談をどうにかぶち壊そうとするも、だんだん彼に惹かれていき……しかし、お互いの愛を確かめあった時、少尉が第一次世界大戦に出兵するという事態に引きさかれる。

しかし、“新時代”のヒロインはメソメソ泣き暮らしたりはしないのだ! 少尉が留守の伊集院家を支えるため、編集者として果敢に仕事に立ち向かう紅緒の奮闘ぶりがコミカルにいきいきと描かれる。時代錯誤だったり進歩的だったり、さまざまな価値観を持つ人々が入り乱れる激動の時代をたくましく生き抜く紅緒は、少女マンガ史に輝く永遠のヒロインである。

くだんの関東大震災の場面は、本作のクライマックスシーン。教会で紅緒に寄り添うのは伊集院ではないのだが……命の危機にさらされた時にしか気づけないことがあるという事実と、“だけど、もっと早く気づくことができたらいいね”というメッセージを、このシーンは語りかけてくるのだ。



<文・粟生こずえ>
雑食系編集者&ライター。高円寺「円盤」にて読書推進トークイベント「四度の飯と本が好き」不定期開催中。
ド少女文庫

単行本情報

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