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今回紹介するのは、『よい子のための尾玉なみえ童話集(2) 雪の女王』
『よい子のための尾玉なみえ童話集(2) 雪の女王』
尾玉なみえ 講談社 ¥660+税
(2016年6月9日発売)
世界の有名童話をベースとした童話集シリーズ、第1巻の『人魚姫』に続く第2巻は再びアンデルセン原作で『雪の女王』。
まあ、そこは鬼才・尾玉なみえ、“原作”といっていいのかあやしいくらい大胆な解釈が加えられてはいるのだが。
ちょっとアンデルセン版の『雪の女王』のストーリーを復習しておこう(ちなみに『アナと雪の女王』も原作とはまったく違うので!)。悪魔のつくった鏡の欠片が少年・カイの眼と心臓に刺さって以来、彼は人が変わり、冷たい性格になってしまう。
そして、雪の女王に連れ去られたカイを、仲よしの少女・ゲルダが探しにいく……。
苦労して氷の女王の城にたどり着いたゲルダの温かい涙がカイに刺さっていた欠片を溶かし、カイはもとの自分を取りもどしてハッピーエンド、という筋だ。
さて、こちらの尾玉版「悪魔のつくった鏡の欠片」という設定は同じ。
その欠片が主人公・ユキの体に入ると、彼女はヒトとしゃべれなくなり、かわりに動物と話せるように。4匹の猫を従える女王としてひきこもり生活を送るユキのしょーもない日々……。
異様に過保護な父親(これがまたナイスキャラ!)からの仕送りでヌクヌク暮らし、猫たちにだけはいばり倒し(猫キャラかわいい!)、ちっさい犯罪をやらかして逮捕され……!?
しかし、ユキの体から欠片がなくなる日が訪れて……ギャグの間にほの見える現代社会への提言(の、ようなもの!)にドキリとする瞬間もあり。
露骨にアウトなギャグを描く一方、根っこには優しさを感じる。
なんて、言葉にしてみるとこっちも少し照れちゃう……尾玉なみえとはそんなCOOOOLな作家なのだと思う。
<文・粟生こずえ>
雑食系編集者&ライター。高円寺「円盤」にて読書推進トークイベント「四度の飯と本が好き」不定期開催中。
ブログ「ド少女文庫」