365日、毎日が何かの「記念日」。そんな「きょう」に関係するマンガを紹介するのが「きょうのマンガ」です。
7月2日はうどんの日。本日読むべきマンガは……。
『うどんの女』
えすとえむ 祥伝社 ¥648+税
白く柔らかな姿態は、たっぷりと満たされた液のなかでからまりあい、しなやかに強いコシを使って跳ねた……。
というわけで(?)本日7月2日は「うどんの日」である。
毎年7月2日頃にあたる雑節「半夏生(はんげしょう)」が田植え終了の目安の日とされ、うどんの名産地である讃岐地方ではその労をねぎらうために、うどんを打って食べる風習があったことから、香川県生麺事業協同組合が1980年に制定したものだそう。
うどんはアレンジがきき、お財布にも優しい。すばらしい食材だが、この日の由来も牧歌的であるし、おじさんぽい昼飯の代表格だったり、食べていると湯気で鼻水が出たりなど、華やかさとはほど遠く、色気のある食べ物には思えない。
さらに素うどんだと肉っ気もないわけだが、なんと「うどんに若干の性的興奮を覚える」奇想天外な欲求を描いた恋愛マンガが、えすとえむの『うどんの女』だ。
バツイチ35歳、まだまだ現役感のある村田さんが「おばちゃん」呼ばわりされながらも働く美大の学食で、毎日のように94円の素うどんを食べにくる21歳の学生・木野君。
うどんが好きなのか(とくに「とろろうどん」はエロいのか)、それを出す人・食べる人が好きなのか、にえきらないやりとりをしながらも、お互いにとめどない妄想があふれ、意識していく。
ところが、村田さんの元ダンナ様は、キノ君を指導する田中先生であることが判明する。しかし、田中先生はそのなりゆきをおもしろがっているようで、キノ君たちをからかうようなそぶりもあり、昼ドラ風味にはならない洒脱さもよい。
キノ君は美大生らしく自分のモヤモヤをキャンバスにたたきつけ、うどんをモチーフにエロティックな作品を仕上げる。
それをめぐる田中先生や村田さんとのやりとりも隠し味として効いている。
ロマンスは日常に転がり、色気も思わぬところに潜んでいる。いつもの立ち食いうどんをすすっていても艶めきを忘れない心意気があれば、この夏、何かが変わるかもしれない?
<文・和智永 妙>
「このマンガがすごい!」本誌やほかWeb記事などを手がけるライター、たまに編集ですが、しばらくは地方創生にかかわる家族に従い、伊豆修善寺での男児育てに時間を割いております。