『神様、キサマを殺したい。』第2巻
松橋犬輔 集英社 \600+税
(2014年7月10日発売)
「殺人」をテーマにした作品は昨今数多くあれど、極めてショッキングでありながら、ここまでストーリー展開で魅せるものはそうそうあるものではない。
まちがいなく、様々な意味で本年度話題となるであろう刺激的な作品だ。
ある日、自分の家族に起きた悲惨すぎる事件によって生きる希望を失った女子高生・咲村千穂は、飛び降り自殺するはずの廃ビルの屋上から殺人を目撃してしまう。
見られたことに気付いたその犯人は千穂も殺そうとするが、殺され際に彼女が発した「あんた“たち”みたいなやつらが」という言葉が気になった犯人は、「たち」とは誰と自分をいっしょにしているのか問い詰める。
犯人の正体は、なんと千穂よりも歳下の高校1年生の少年・笛田マコト(マコちん)。彼の殺人にはいっさいの理由がない。
そして「殺人者として成長が必要」という明らかに狂った理由で、彼女を自殺に追い込んだ奴らを「オレが全員殺してあげるよ」と約束するのである。そのうえで、最終的に千穂を殺すと言うのだ。
しかし、驚くほど無邪気に殺人にトライするマコちんは、これまた驚くほど信用できない。少しでも殺人鬼を信用したことを、あっという間に後悔することとなる千穂との関係性にも、常に緊張感が保たれているのが興味をそそる。
そして、無邪気ゆえに無防備なマコちんに対して、追手は手強く、またマコちんとは違った意味で異常であるのも、グイグイ読ませるポイントだ。
2巻で登場するのは、肉片の感触とニオイ(!)から死因や殺された状況まで読み取り、確実に相手を追い詰める91歳の猟師・六郷トヨ吉。さらに、警察の側にも、病的な潔癖症でありながら的確に犯人像をプロファイリングするエリート警部補・日浦博彰など、気になりすぎる人物が続々と登場。
文字で簡単に書くと非常に「マンガ的」とも思えるキャラクターたちだが、冴えたディテール描写によって誰もが一種の生々しさを獲得している。
いきなりハードルが高く設定された目標、そして予想外の動きをする登場人物によって、この破滅的な物語はどう転がっていくのか? 序盤から説得力が高いだけに、この先も心から楽しみだ。
<文・大黒秀一>
主に「東映ヒーローMAX」などで特撮・エンタメ周辺記事を執筆中。過剰で過激な作風を好み、「大人の鑑賞に耐えうる」という言葉と観点を何よりも憎む。