日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『ウザ姉!!』
『ウザ姉!!』 第1巻
セレビィ量産型 集英社 ¥600+税
(2016年6月17日発売)
マンガ内で少女たちが言われる「ウザイ」は、ほとんどの場合ほめ言葉だ。
いわゆる「ウザカワ」。ひと言多い、まとわりついてくる、やたら自信があってドヤ顔する。
中学3年の宇佐美健二の姉、宇佐美ミミ(高2)。ミミは、健二が好きで好きでしかたない。
学校には一緒に行きたがるし、すぐ抱きついてくるし、恋人のふりしてイチャついてくる。
うん、ウザい。
健二は心の底から、ミミの行動を嫌がっている。
作中では、「人間には近親交配を避ける心理現象がある」と強調されている。
姉の執拗な行動は、周囲の友人や読者側には「かわいい女の子の猛烈アタック」に見えるので、とてもかわいらしい。
どんなにかわいかろうと、健二は迷惑千万でしかない。彼が嫌がれば嫌がるほど、「ウザさ」のフィルターが増大。姉が小動物的にかわいく見えてくる仕組みだ。
ミミは、健二のことを好きな少女・三枝由菜と出会った時、喜んで応援しまくっている。
純粋に姉として、弟が好きなのだ。その思いには裏表がいっさいない。
2人の関係があまりにもクリーンなため、何をやろうと見ていて安心できる。
由菜のほのかな恋心や、従姉妹の宮迫ナコの強引なアプローチに翻弄される健二。思春期男子には精神的にハードすぎる、疲弊する。
それだけに、恋愛関係が成立しないミミの存在の安定感たるや。いや、うっとうしいんだけど。
『とんぬらさん』で、薫り立つほのかなエロスを得意とした作者。
今回その腕前は、健二とミミの両親のほうで発揮しまくっている。
登場するたびに、ムワっとした性のにおいを振りまいてくれるので、そちらもお楽しみに。
<文・たまごまご>
ライター。女の子が殴りあったり愛しあったり殺しあったりくつろいだりするマンガを集め続けています。
「たまごまごごはん」