『姉ログ 靄子姉さんの止まらないモノローグ』第1巻
田口ケンジ 小学館 \419+税
「姉の日」という記念日があるのをご存じだろうか?
兄弟姉妹型の研究や著作で知られる畑田国男が1992年に提唱したもので、それが12月6日。前年に提唱した9月6日の「妹の日」の3カ月後で、また3姉妹を救った伝承を持つキリスト教司祭・聖ニコラウスの記念日であることから、12月6日となっている。
ちなみに、畑田国男は『悪魔のことわざ辞典』などのブラックユーモアでも知られるが、もともとは漫画家。1973年には『宇宙船ノア』で日本漫画家協会賞大賞も受賞している。
マンガ界では昨今、「姉」よりも「妹」のほうがなにかとフィーチャーされがちだが、田口ケンジ『姉ログ』の主人公でもある近衛姉弟の姉・靄子はかなりインパクト大だ。
見た目と雰囲気は、長い黒髪で容姿端麗の才色兼備。実際に勉強もスポーツも優秀で、クラス委員を務めるなど人望も厚い高校2年生。そんな完璧な彼女なのに、妄想の果てに奇行に走ってしまうという、キケンでザンネンな癖を持っている。
それもこれも、弟・輝が小さい頃に「お姉ちゃんと結婚する」と無邪気に言ってしまったことがきっかけで、弟のことを姉に求婚して欲情する「変態」だと思いこんでしまっているため。
いや、そもそもその思考がキケンでザンネンという話なのだけれど、輝がめぐらす淫らな策謀(もちろん妄想!)に引っかかるまいと、勝手につっ走って……。
「姉萌え」どころか、こうなると姉のほうが完全に「弟萌え」!? ただ、読者はそんな暴走系の姉がかわいいとも思えてしまうはずだ。
甘えさせてくれて、一方で叱ってくれるという姉のイメージとはほど遠いが、姉の日にこそキケンでザンネンな姉に萌えてみては?
<文・渡辺水央>
マンガ・映画・アニメライター。編集を務める映画誌「ぴあMovie Special 2014 Autumn」が9月17日に発売に。『るろうに剣心 京都大火編/伝説の最期編』パンフも手掛けています。