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【きょうのマンガ】7月24日はあの映画のタイトルの日! おすすめするのは……

2014/07/24


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劇場版『7月24日通りのクリスマス』
吉田修一(作)金子ありさ(脚)浦川まさる&佳弥(画) 講談社


ポルトガルのリスボンを舞台にした、『アモーレ・アモーレ』というマンガをご存じだろうか? マリアという女性が主人公の大河ラブロマンで、彼女が恋に落ちる青年ホセは、特別本が発売されるほどの人気キャラクター!
その2人が運命的な出会いを果たすのが、リスボンに実在する“7月24日通り”。ちなみに通りの名前は、19世紀のポルトガル王国の内戦で、7月24日に自由主義勢力が国王ミゲルから首都リスボンを奪取したことにもとづいている。2人はそんなとおりで恋の炎を燃やし、心を奪われてしまったわけだ。

本日の一冊は、そんな『アモーレ・アモーレ』……と言いたいところだが、じつはこれは架空の作品。吉田修一の小説『7月24日通り』の映画化作品『7月24日通りのクリスマス』にヒロインの愛読書として登場するマンガなのだ。
その『7月24日通りのクリスマス』をコミカライズしたのが、本作。『アモーレ・アモーレ』の挿話はそのままに、映画とも原作小説ともまたひと味違う、マンガならではの作品に仕上がっている。

29歳で独身の地味なOL・本田サユリ。妄想が趣味である彼女の唯一の楽しみは、地元・長崎の街をリスボンに置き換えて、『アモーレ・アモーレ』の世界観に酔いしれること。
そんななか、サユリは初恋の人で先輩の奥田聡史と再会。しかも聡史からデートに誘われる。幼なじみでマンガ家志望の森山芳夫に励まされながら、一歩を踏み出そうとするが……。

マンガ版を担当している浦川まさる&佳弥は妹と姉のコンビ作家で、浦川まさるはほかにも『伝染歌 映画原作版』や『ハンチョウ ~神南署安積班~』など映画やドラマ原作を多く手掛ける、コミカライズの名手。「現実はマンガのようにはうまくいかないものなのか」というのが本作のテーマで、実際にマンガというメディアで物語が描かれたコミカライズでは、それがさらに強く押し出されているのもポイントだ。
悪友である芳夫だが、彼もサユリをずっと想い続けていて……というのも、ある種、マンガの定番。はたして、最後にサユリが結ばれるのは?
「現実とマンガは違うよね」と、マンガ的なセオリーを作中で否定しながら、マンガとして納得のハッピーエンドになっているのが一興である。

ちなみに映画で『アモーレ・アモーレ』の作画を担当しているのは、『キャンディ キャンディ』のいがらしゆみこ。『アモーレ』と『キャンディ』を重ね合わせながら読むと、より理解が深まるかも!?



<文・渡辺水央>
マンガ・映画・アニメライター。編集を務める映画誌「ぴあMovie Special 2014 Summer」が発売中。DVD&Blu-ray『一週間フレンズ。』ブックレットも手掛けています。

単行本情報

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