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【日刊マンガガイド】『たいようのいえ』第11巻 タアモ

2014/07/24


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『たいようのいえ』第11巻
タアモ 講談社 \429+税
(2014年7月11日発売)


第38回講談社漫画賞少女部門を受賞した、タアモ『たいようのいえ』は11巻に入って、新たな展開へ! そこに至る再会と別離で、あたたかな涙を誘う内容になっている。

父の再婚で、家に居場所を失ってしまった高校2生の本宮真魚(まお)。密かに書きつづって発表しているケータイ小説だけが彼女の逃げ場だったが、年の離れた幼なじみで、 今は会社員の中村基(ひろ)の家に居候をすることになる。

基は高校3年のときに両親を亡くしていて、離れ離れになった弟、妹と再び自分たちの家で一緒に暮らすのが夢。 やがて、小父の家にいた弟・大樹がやってきて、高校2年の彼は真魚の同級生となるが、妹・陽菜はある理由から家に戻ろうとしない。

真魚と父、基との陽菜の間の縮められない距離。そんななか、本宮家と中村家は、陽菜のいる仙台へ合同の家族旅行に向かうが……。

基への想いを抱えての同居。加えて、新たに一緒に暮らすようになった大樹からも、想いを寄せられる真魚。少女マンガらしいドキドキも随所にあるが、一番の魅力はシンプルだけれど複雑で、かみ合わないとうまくいかない「好き」という想いを丁寧に描いているところだ。
本作における「好き」の相手は、恋愛対象だけじゃない。考えてみれば当たり前なのだけれど、家族も「好き」の相手だということを、きちんと伝えてわかり合うべき存在なのだと本作は教えてくれる。
『たいようのいえ』が10代の少女はもちろん、大人からも幅広い支持を得ているのも納得できる。いや、むしろ大人こそグッとくる作品なのだ。

家族、幼なじみと、本作で登場人物たちが向き合うのは新たに出会う人たちではなく、本来はごくごく身近にいる、知ってはいるけれど知ろうとしないできた相手だというのもポイント。
相手や自分を見直して気づくこと、わかること。いちから始まる恋愛の物語ではなく、あるべきものを取り戻していく愛情の物語で、大仰に言えば再生のドラマでもある本作。
11巻では、様々なことがあるべき場所に戻り、そこで真魚と基は……となるが、真魚の前にある人物が!
この先の真魚と基、それぞれの家族たちの関係もあわせて、どんな「好き」が待っているのか楽しみだ。



<文・渡辺水央>
マンガ・映画・アニメライター。編集を務める映画誌「ぴあMovie Special 2014 Summer」が発売中。DVD&Blu-ray『一週間フレンズ。』ブックレットも手掛けています。

単行本情報

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