日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『マギ』
『マギ』 第30巻
大高忍 小学館 ¥429+税
(2016年7月15日発売)
『千夜一夜物語』をモチーフに、中東・アジアのテイストあふれる魔法世界が展開する「週刊少年サンデー」の人気作もついに第30巻に達した。
物語は、極東の大国・煌帝国の支配権をめぐって起きた華安平原の戦いから3年後の世界から始まる。
この戦いの最中に“死んで”しまったアリババは、未開の地・暗黒大陸の南端で、肉体から切り離されてしまった精神をハニワ状のよりしろに注入されてよみがえった。
3年もの時を経てもとの世界にたどりついたアリババが、保管されていた肉体を取り戻して“復活”をとげ、3年という時の流れの激しさを思い知ったところで前巻が終了。本巻では「最終章始動」を大々的にうたっている。
ちなみに本作の主人公には、アリババともうひとり、創世の魔法使い「マギ」と呼ばれる少年・アラジンが存在する。第29巻でアリババは、アラジンも1年前から失踪していることを知り、アラジンの手ががりを求めて煌帝国へおもむいた。
煌帝国の内戦に介入することで戦争を解決に導いた国際同盟の理事である“七海の覇王”シンドバッドが中心となって作りあげた「戦争のない世界」は、経済活動を中心とする一見近代的な世界だが、内戦以前は兵役と奴隷制が国家を支えていた煌帝国は時流におくれてすっかり衰退してしまっていた。
今や女帝として国政に腐心する旧知の練紅玉を救うべく、アリババがいよいよ持ち前の交渉力を発揮する!
最終章の見どころは、なんと言っても3年で激変したり、あるいはまったく変わらなかったりしているキャラクターたちの姿。
それぞれがおのれの信念に基づいて新たな道を選んで、そのなかで行方知れずのアラジンの影が見え隠れする展開は、本作がどのような最終章を迎えるのか楽しみなところである。
新章突入のこの機会に、既刊の単行本を読み返してみてはいかがだろうか?
<文・富士見大>
編集・ライター。特撮のあれこれやマンガのあれこれに携わる。好きなファミコンゲームは『アラビアンドリーム シェラザード』。『別冊宝島 「仮面ライダー」伝説の10人ライダー総特集』や、ただいま絶賛発売中の『手裏剣戦隊ニンニンジャー公式完全読本 天下無敵』にも参加しています。