365日、毎日が何かの「記念日」。そんな「きょう」に関係するマンガを紹介するのが「きょうのマンガ」です。
8月4日は橋の日。本日読むべきマンガは……。
『カツカレーの日』 第1巻
西炯子 小学館 ¥429+税
8月4日は「橋の日」。一見ダジャレのようだが、昭和60年に宮崎県延岡市出身で、橋梁メーカーに勤務していた湯浅利彦氏が提唱し、同県での発祥から30年以上の歳月を経て全国で「橋の日」運動が実施されるようになっているという、由緒ある記念日だ。
そんなわけで、世界中で橋を建設するのを使命とする男が重要な役割を果たすマンガ『カツカレーの日』をご紹介しよう。
作者は『姉の結婚』、『娚の一生』など人気作を次々送りだす西炯子。
上記のような仕事ぶりで「バカ橋」「橋バカの高橋」の異名を持つ中年男・高橋は、偶然入った読書カフェ「夜の森」の筆談用ノートにて、婚活に悩む女性の書きこみに批判的な返信をする。
その女性こそがヒロインの斉藤美由紀だ。彼女は劇団員の一法師護(いっぽうし・まもる)とつきあっていたが、ある家庭の事情がもとで、結婚で安泰な生活を手にいれるために一法師と別れ、条件のいい相手に限ったお見合いに励んでいたのだ。
くせ者ぞろいのなかから、結婚向きの男性と出会うものの、美由紀の心は晴れず、高橋に打ち明けるうちに、反発しながらも強い親近感を抱くが……。
婚活を題材にし、理性を押しとおしがちな美由紀を通して、まずは自分自身と向きあうことの大切さを示すのと同時に、恋愛や結婚にはいろいろなかたちでの「橋渡し」が必要である、とも感じさせる。
現在では作中にあるようにお相手を紹介する会社も多いし、その役割を買って出るタイプの人もいるが、それだけでなく親身になって相談してくれたり、厳しい指摘をしたりする存在こそがいてほしいものだ。
また、大事な話ができるシチュエーションを提供する店や、場合によっては「失恋」も、その働きをする。
橋とは物理的に生活を豊かにしてくれるだけでなく、「心のかけ橋」という表現があるように、心理的にもつなぐものでもある。
一見武骨だが、橋をかける仕事への純粋な情熱や、重ねた年齢にふさわしい包容力を持つ高橋には、つい惚れてしまいそう。
かたくなだった美由紀の心は、高橋との運命的な出会いにより、意外な方向へと動くが、エンディングは爽やかなものだ。女性のシビアな現実をえぐる作品が多いなか、吹き渡る川風のような安らぎをくれる。
<文・和智永 妙>
「このマンガがすごい!」本誌やほかWeb記事などを手がけるライター、たまに編集ですが、しばらくは地方創生にかかわる家族に従い、伊豆修善寺での男児育てに時間を割いております。