日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『屍鬼』
『集英社文庫 屍鬼』 第1巻
小野不由美(作)藤崎竜(画) 集英社 ¥780+税
(2016年6月3日発売)
『屍鬼』は、もともと小野不由美の代表作のひとつであるホラー小説。
死に浸食された孤立集落を舞台にした、ハードカバーにして上下巻合わせて1200ページを超える重厚な吸血鬼ものだ。
藤崎竜によるコミカライズは全11巻を数え、2010年にはアニメ化もされている。
その文庫版の刊行が2016年7月から始まった。
三方をモミの木で囲まれ、卒塔婆作りを主産業とする人口1300人の外場村。
いまだ土葬の風習が残るこの村で、変死者が続出する。1年前に越してきた少年・結城夏野は、原因不明の貧血で死んだはずの同級生の視線を感じていた……。
原作の筋をただ追うのではなく、『封神演義』でもアレンジが冴えた藤崎竜の腕が、ここでも振るわれている。
都会育ちの高校生・結城夏野に焦点を当て、少年マンガ的なスピード感とコミカルな要素を加えつつ大胆にアレンジ。それが高評価につながった。
文庫版になった今、改めて読んでみても、底なし沼に沈むような重さの原作とは異なり、マンガならではのアクティブな怖さがそこにある。夏のお盆前後にピッタリの作品だ。
<文・卯月鮎>
書評家・ゲームコラムニスト。週刊誌や専門誌で書評、ゲーム紹介記事を手掛ける。現在は「S-Fマガジン」(早川書房)でファンタジー時評、「かつくら」でライトノベル時評を連載中。
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