日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『ホロビクラブ クール教信者短編集』
『ホロビクラブ クール教信者短編集』
クール教信者 秋田書店 ¥562+税
(2016年7月20日発売)
「もし人類が滅亡するとしたら、なんで滅びるだろう」
大学の研究室でまじめに論じあったら、どんな会話になるだろう。
ゼミなのでおちゃらけはだめだよ。
病気で人は滅ぶだろうか。太陽が爆発したらどうなるのだろうか。
連作「ホロビクラブ」は、まじめでインナーな考え方の男子コウ、巨乳であっぱらぱーなまるみが、屁理屈をこねることに関してはだれも及ばないビッチ先輩と、様々な事象に対し言論を戦わせ、シミュレーションする作品。
先にあげた「人類滅亡」の話から、「同窓会にもし呼ばれなかったら」という身近な話まで、とことん先輩は理づめで話してくる。
基本的に先輩の考え方はポジティブだ。後ろ向きなコウの意見をことごとくひっくり返していく。
ところが先輩はデフォルメされた不気味なキャラクターとして、人間ではないように描かれており、「前向きなのにネガティブ」な、モヤッとした言動が多い。
だから上昇志向な考え方の話なのか、それとも滅びに向かう人間のささいな会話なのか、次第にわからなくなってくる。
この短編集には他にも、女子学生たちが巨大剣道ロボに乗って戦う熱血青春活劇「キリのいいところで。」など、様々な作品が掲載されている。
クール教信者は『小林さんちのメイドラゴン』のようにスラップスティックなギャグの合間に人生観を盛りこんだものや、『チチチチ』のようにひたすら巨乳愛を語るもの、キュンキュンくるラブコメ『旦那が何を言っているかわからない件』など、ネタの引き出しが非常に多い作家。連載数もめちゃくちゃ多い。
あとがきにあるように、「クール教信者って誰?」という人の入門書にはもってこいだろう。
その場合は「キリのいいところで。」から読むのがオススメ。
『ホロビクラブ』はクール教信者哲学の濃度が高い上級編なので、心してかかりながら、他のクール教信者作品群の思想と比較するとおもしろい。
<文・たまごまご>
ライター。女の子が殴りあったり愛しあったり殺しあったりくつろいだりするマンガを集め続けています。
「たまごまごごはん」