日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『世界八番目の不思議』
『世界八番目の不思議』 第2巻
宇島葉 KADOKAWA ¥580+税
(2016年7月15日発売)
人ならざる者(ただしかわいい)が続々と登場する、「予測不能のアンノウン・コメディー」の2巻。
波打ち際に倒れていたホタテブラの美女はじつはホタテでそのまま結婚し……とか、満月の夜ウサギ耳の女に自殺を止められた男が再就職を斡旋してもらい……とか、無宗教化する衆生へ阿弥陀如来みずからアイドルとなり歩み寄る設定のアイドルグループ・AMD48の実態は……とか、ちょっとシュールな短編が7話収録されている。
第1巻と同じく、ひとつの話にPart AとPart Bがあり、2パートに分けて物語が綴られる構成だ。
シュールな世界観が多めの短編集だが、じつは収録作品のなかで一番現実世界寄りなのが、巻頭収録の「ワラシベロンダリング」。
昔話の「わらしべ長者」のように、物々交換で女児向けカードゲームのレアカードを入手できないかと奔走する小学生の女の子が主人公。
しかし一向にアイテムのグレードはアップせず、手元に残ったガム一粒はお姉ちゃんに食べられる。ガムのかわりにお姉ちゃんがくれた脱ぎたてのパンツをとなりの家のタダシくんに売ると、あっさりと1万円が手に入ってしまう。汚れたパンツマネーは使えないと、マネーロンダリングでパンツ成分を洗うことにするが……。というのがAパート。
Bパートではお姉ちゃんの彼氏が登場。「アイドルは決してパンツを見せない」という女児向けカードゲームの主人公・みるきちゃんのパンツが見たくて仕方がない彼氏がとった行動が描かれる。
時にエゲつない下ネタが展開されるが、すっきりした描線とかわいらしいキャラクター、あまりにシュールな状況設定に笑わされて抵抗感なくすんなりと読めてしまう。
第1巻にあったカラー口絵がなくなってしまったのはとても残念だが(1巻のパターンに倣えば口絵はAMD48だったハズ。あみたそー!)、カバー下の表紙、裏表紙や、オビ裏部分の遊びは健在!
AMD48の極楽直行ツアーのチケットは紙の単行本でしか手に入らない!?
<文・秋山哲茂>
フリーの編集・ライター。怪獣とマンガとSF好き。主な著書に『ウルトラ博物館』、『ドラえもん深読みガイド』(小学館)、『藤子・F・不二雄キャラクターズ Fグッズ大行進!』(徳間書店)など。4コマ雑誌を読みながら風呂につかるのが喜びのチャンピオン紳士(見習い)。