日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『ネオ寄生獣』
『ネオ寄生獣』
岩明均(原作) 遠藤浩輝、竹谷隆之、萩尾望都、PEACH‐PIT、
平本アキラ、真島ヒロ、皆川亮二、植芝理一、太田モアレ、
韮沢靖、熊倉隆敏、瀧波ユカリ(画) 講談社 ¥920+税
(2016年7月22日発売)
人間の頭に擬態して寄生する奇妙な生物。彼らを突き動かすただひとつの衝動は――“この種を食い殺せ”!
岩明均の傑作『寄生獣』を題材に、実力派の作家たちが描きだすアンソロジーコミック12編。
豪華な作家陣が作品世界やキャラクターと本気で取り組んだことが伝わってくる、ありとあらゆる多彩なメニューがそろっている。
萩尾望都の「由良の門を」は、みなし子由良の頭に鳴り響く謎の声と、出生の秘密を描く。
太田モアレの「今夜もEat it」は、どこかであったかもしれない幸せな共生生活の話。
竹谷隆之の「ババ後悔す」は、僻地の老婆に寄生してしまってボヤいている寄生生物をフィギュアで表現。
韮沢靖の「PARAGANT」は、別の惑星で格闘ゲームのコマとして飼いならされた寄生生物の物語。
真島ヒロの「ルーシィとミギー」は、『FAIRY TAIL』のルーシィの右手にミギーが宿る。
PEACH-PITの「教えて! 田宮良子先生」は、思春期らしい新一のモヤモヤした感情を田宮良子にかき回されるコメディ。
熊倉隆敏の「変わりもの」は、「仲間」を避けるように地方都市で人間の家族と暮らす寄生生物と、その前に現れた旅行者である「仲間」との出会いを描く。
皆川亮二の「PERFECT SOLDIER」は、戦場を「食堂」とする寄生生物の兵士の話。
植芝理一の「ミギーの旅」は、新一と別れ「植芝ワールド」を放浪するミギーが見つけたものの話。
遠藤浩輝の「EDIBLE」は、他の星を舞台に、異星人に寄生した寄生生物との戦いを描くアクション。
瀧波ユカリの「寄生!! 江古田ちゃん」は、江古田ちゃんの股間に寄生した「オマンキー」との生活を描いたお下劣4コマ。
平本アキラの「アゴなしゲンとオレは寄生獣」は、もし美津代さんに助けられたのが新一ではなくアゴなしゲンさんとケンヂだったら? という「寄生」物語。
原作の世界観そのまま! といったサイドストーリーものから、徹底的なパロディや、自作品の世界に『寄生獣』キャラを放りこんだ作品まで、幅広い語り口で新たな『寄生獣』が描かれる。
作家陣の豪華さもさることながら、原作に対する愛情と深い理解が伝わってきて、こんなに満足度の高いトリビュートコミックも珍しい。
骨太なテーマで死生観を描きだした『寄生獣』だけに、シリアスなトリビュート作品はシチュエーションを楽しめるし、ギャグはそのギャップがさらに増幅されて楽しめる。
女性作家によって描かれた、既刊『ネオ寄生獣f』もあわせてどうぞ。
<文・秋山哲茂>
フリーの編集・ライター。怪獣とマンガとSF好き。主な著書に『ウルトラ博物館』、『ドラえもん深読みガイド』(小学館)、『藤子・F・不二雄キャラクターズ Fグッズ大行進!』(徳間書店)など。構成を担当した『てんとう虫コミックスアニメ版 映画ドラえもん 新・のび太の日本誕生』が発売中。4コマ雑誌を読みながら風呂につかるのが喜びのチャンピオン紳士(見習い)。