365日、毎日が何かの「記念日」。そんな「きょう」に関係するマンガを紹介するのが「きょうのマンガ」です。
8月21日はジャスコがイオンになった日。本日読むべきマンガは……。
『女騎士さん、ジャスコ行こうよ』 第1巻
伊藤ヒロ(作) 888(画) 霜月えいと(キャラクター原案) KADOKAWA ¥550+税
地方民の強い味方・総合スーパージャスコ。
ここに行けばどんなものもそろうという夢のお店・ジャスコ。
2001年の本日8月21日は、そんなジャスコを経営するジャスコ株式会社が、イオン株式会社と社名を変更した日である。だからなんだといわれても困るがとにかくきょうはそういう日である。
その後、2011年に総合スーパー・サティを展開するマイカルをイオンが吸収合併したことで、全国のジャスコ(及びサティ、ポスフール)はイオンへと店名を変更。
ジャスコという名は日本から姿を消していくことになる。
だが、そうはいってもジャスコの名に慣れ親しんだ方のなかには、ついついイオンのことをジャスコと呼んでしまう方も多いだろう。
そんなきょうは『女騎士さんジャスコ行こうよ』を読んで、女騎士さんやお姫様といっしょにジャスコに行っていただきたい。
本書は、伊藤ヒロによるライトノベルを原作とする888のマンガ。
オークの軍団に攻められた国からエロゲーマニアのオタク姫(8歳児)と「くっころ」系女騎士が日本にやってくるという話である。
これ幸いと日本のオタク文化にどっぷりひたろうとするお姫様だったが、ついたところは岐阜と長野の県境の超ド田舎。
オタクショップはおろかインターネット環境さえろくにないという文化的不毛地帯。
だが、そんな田舎にもジャスコはあった!
かくして姫様は地方民のユートピア、ショッピングモール・ジャスコを目指すのである!
……じつは本書、原作が刊行された当時(2014年)、ジャスコの店名をタイトルに使用する許可を求めて担当編集者がイオンに問いあわせたところ、ジャスコという名の店舗は日本から消滅していたことが明らかになる……なんてことがあったらしい。
が、イオングループの「別に名前使いたきゃ勝手に使っていいよ。献本もいらんよ」(大意)という寛大な判断で現行のタイトルで刊行されたという。
これが『女騎士さん、イオン行こうよ』ではおもしろさも半減していただろうし、イオンの対応は神というにふさわしいのではないのでないか。
そんなわけできょうはぜひ、本書を読みつつ今はなきジャスコに思いをはせていただきたい。
他にやることがないのかといわれそうだが、1年365日のなかには、こんなあからさまにネタ切れな日があるのもやむをえないことである。
<文・前島賢>
82年生、SF、ライトノベルを中心に活動するライター。朝日新聞にて書評欄「エンタメ for around 20」を担当中。
Twitter:@maezimas