『なんと孫六』第81巻
さだやす圭 講談社 \429+税
(2014年7月17日発売)
「月刊少年マガジン」の長きにわたる看板作品が、この巻をもってついに完結。
連載開始は1981年。33年にわたる連載は、月刊少年誌での最長である。
いやぁ、ホントにいろんなことがありました!
大阪のヤバい不良が集まる浪城高校に入学した当時の孫六は、ケンカざんまいの日々。
一方で、野球の素質を高く買われ、野球部に入部すれば1年からエースで4番。
揺れる速球「孫六ボール」でぐいぐい勝ち上がり、夏の甲子園大会準優勝の座を射止めるのだった。
しかし、「不良×高校野球マンガ」の枠から大きく逸脱していくのが、孫六の孫六たるゆえん。名だたる不良どもは孫六を放っておかず……。
警察ざたの死闘にまで発展し、高野連から追放処分に。
退学後、16歳でプロ球団入り。大活躍するも、野球賭博疑惑に巻きこまれるは、暴力事件で逮捕されるはで、これまた謹慎処分……。
謹慎中の「ゴルフ編」を経て、メジャーリーガーとして球界復帰。ワールドシリーズでMVPに輝いた絶頂のさなかで、胸に銃弾を食らって瀕死の重傷を負ってしまう。
一命はとりとめるが球団から戦力外通告を受け……。
最終章の孫六は、野球W杯の日本代表選手としてマウンドに返り咲く!
ざっとダイジェストしてみただけで、並みの破天荒キャラではないことが一目瞭然だ。
マウンドで、バッターボックスで、に~っとふてぶてしい笑みを浮かべ、挑発的な関西弁で敵をあおりまくるのが常。
とはいえ、孫六は単なるむちゃくちゃな暴れん坊ではない。高校野球追放、プロ追放、メジャーをクビ、と窮地に立たされても、新たな居場所を切りひらいていく交渉能力にたけた男なのだ。
絶大な権力を持つ相手にも屈せず、ときにオトナたちの痛いところをチクチクつつき、ときに世論を味方につけるべくアピールする、そんな立ち回りも痛快至極。
ちなみに、この最終巻を読んで気づいたのですが……孫六って、まだ10代だったのだ。
その濃密な日々を、この夏一気に読み返してみたくなった。
さらば、つながり眉毛の愛すべき悪童よ!
<文・粟生こずえ>
雑食系編集者&ライター。高円寺「円盤」にて読書推進トークイベント「四度の飯と本が好き」不定期開催中。
「ド少女文庫」