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『アヴァルト』 第2巻 光永康則 【日刊マンガガイド】

2016/09/04


日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!

今回紹介するのは、『アヴァルト』


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『アヴァルト』 第2巻
光永康則 講談社 ¥600+税
(2016年8月9日発売)


オンラインゲームを題材とした作品のおもしろさは、リアル人格と「アバター」の2つは別物だ、という点にある。「≠」なのだ。
ゲーム内では魔法などを使う特殊さを堪能できる。しかし当然ルールの外の行動はできない。現実とゲーム内世界の常識と自由度は、まったく違う。
このあたりを「ログ・ホライズン」や「ソードアート・オンライン」などがうまく描いている。

このマンガでのリアルとゲームの関係はかなり複雑だ。
まず現実側の主人公ロイド・コスギは、宇宙船でコールドスリープから目覚めた唯一の人間。
1万年寝ていた間に世界の文明は消えたらしい。

一方MMORPG世界は、ゲームサーバーが1万年稼働し続けていた。
中世ヨーロッパ風の世界には、人間かキャラクターアバターかわからない存在がたくさんいる。
なぜか、このゲームのマップと、地球上の地図が、まったく同じになってシンクロしている。

ロイドのアバターはカエル剣士。なのでログインすると地球上と思われるマップに、カエルのアバターが生成され、歩きまわることになる。ログアウトすると、本人の意識は宇宙船に戻る。

ただしロイドは、マップ内にいる人間はプレイヤーキャラではなく、人間そのものだと考えている。
一方、世界で幅をきかせている、自らを神(アヴァルト)と呼ぶ巨大な存在たちは、世界を荒らすモンスターを討伐するどころか、人々を平気で虐殺する。
どこまでが現実なのか、あまりにも曖昧。住人たちは自分たちの存在をまったく理解できていない。第三者視点のロイドが焦るのももっともだ。

第2巻では、本当の人間はどこにいるのかが次第にわかってくる。その解答はあまりにも残酷だ。
かと思えば、場所は一変して純日本風戦国時代に。そこでの人間とプレイヤーアバターのやりとりが描かれるなど、世界中の侵食状況も見えてくる。

まだいったい何が起きたのかもわからない状態。
アヴァルトの正体を含め、謎だらけの世界を、ロイドのカエルといっしょに解き明かしていくのが、おもしろくも残酷なMMORPGミステリーだ。



<文・たまごまご>
ライター。女の子が殴りあったり愛しあったり殺しあったりくつろいだりするマンガを集め続けています。
「たまごまごごはん」

単行本情報

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