人気漫画家のみなさんに“あの”マンガの製作秘話や、デビュー秘話などをインタビューする「このマンガがすごい!WEB」の大人気コーナー。
今回お話をうかがったのは、岡部閏先生!
「裏サンデー」とマンガアプリ「マンガワン」で、アクセス数ランキング上位をキープする超話題作『グッド・ナイト・ワールド』。
壊れかけの家族を中心に仮想世界で繰り広げられる物語は、やがて現実の家族を巻きこみ大きく動き出す――。 インタビュー第1弾では、『グッド・ナイト・ワールド』の黎明期からテーマの核心まで掘り下げて聞くことができた。 “神回特集”での紹介(第20話&第24話)も絶賛公開中です!
今後の展開から目が離せない本作の著者、岡部閏先生とは何者なのか!?
今回のインタビューでは、鬼才と呼ばれる「岡部閏」の人物像にフォーカスして質問を続けていこう。
岡部閏『グッド・ナイト・ワールド』インタビュー 狂って、狂って、狂い続ける――歪んだ家族の物語の原点とは!? 連載開始前の岡部先生のとんでも要望にも衝撃!!【総力リコメンド】
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本作誕生の「肝」とも言える岡部先生のネトゲ経歴とは?
――『グッド・ナイト・ワールド』はオンラインゲームの世界が舞台です。岡部先生自身がハマったネトゲはあるのでしょうか?
岡部 今でいう「アメーバピグ」のようなアバターを使用したコミュニケーション主体のネットサービスを中1のころに始めたのが最初です。
それからもFPS、MMOなど、ひとつにつき半年くらいのスパンで移り変わりはしたものの、絶えずネットゲームをプレイし続け、青春時代を費やしてきました。
ただネットゲームのなかでもっともオーソドックスな「MMORPG」(大規模多人数同時参加型オンラインRPG)の経験は少なく、オンライン要素が付属した家庭用ゲームをやることが多いです。某モンスター育成ゲームとか(笑)。
――いわゆる「ネトゲ廃人」と言われる人たちは主要キャラクターのアイデンティティである一方、辛辣な言葉も並びます。先生自身はどのような存在と捉えていますか?
岡部 ネトゲにのめりこんだ経験のある人ならわかると思いますが、どんなにそのゲームにハマっていたとしても、寝食を惜しんでひたすらレベル上げ、プレイをし続けることは本当に難しいです。
ゆえに「廃人」と呼ばれるような人たちは、じつは人間として優秀なスペックを持っているんですよね。たまたま出会ったのがゲームで、たまたまのめりこんだものがネトゲというだけであって、もし勉強や仕事に目を向けていたなら、すぐにでもエリートになれる存在のはず。ひと言で言うと「方向性を間違っているだけの傑物」なんじゃないでしょうか。
――もし作中のネトゲ「プラネット」のように、実際に3億円の賞金が出るネトゲイベントが登場したら、狙いにいきますか?
岡部 実際、そんな巨額が絡むと「プロゲーマー」と呼ばれる怪物たちが世界中から集まってくると思います。
先ほどの質問にもあったように、彼らは生活と才能のすべてをゲームに注ぎ込む天才で、素人(僕)がつけいるスキなんてない。なので、賞金が3億と聞いた瞬間に無理だと尻込みしてしまうと思います。
ただ5万円とか現実的な数字であれば、プロに目を付けられずに、こっそり狙いにいけるかもしれないと、がんばってみるかもしれません。
――近い将来、完全な仮想世界ができあがることを望んでいますか?
岡部 昔は望んでいましたが、今は恐れています。
――では、『グッド・ナイト・ワールド』を描いていて楽しいのは、どんな時でしょうか?
岡部 やっぱりゲームが大好きなので、「プラネット」の設定に関する部分はとても楽しいです。
キャラがキャラに対して攻撃したとき頭上にダメージ数値が出たりとか、呪文や町の名前など、いかにもゲームっぽいネーミングを考えているときはワクワクします。
――ちなみに、岡部先生のお気に入りのキャラはいますか?
岡部 士郎さん。今まで書いたことのないキャラクターなので新鮮です。以前連載していたマンガと比べて『グッド・ナイト・ワールド』の連載作業には楽しさしか感じていません。
――実写化するとしたら、赤羽一家を演じてほしい俳優さんはいますか?
岡部 一家全員、神木隆之介さんに演じてほしいです。
日本一のクソガキ!?
岡部先生のルーツにの驚愕……!!
――ここからは、先生のパーソナルな部分に迫る質問をさせていただきたいと思います。公開できる範囲でかまいませんので、プロフィールを教えてください。
岡部 1991年生まれの男です。ペンネームの由来は「本名+何か」だったと思うんですが、忘れました。
――岡部先生が、どんな子ども時代を過ごされていたのか、とても気になるのですが……ハマっていたものなどあれば教えてください。
岡部 趣味嗜好に関してはごく普通に『ポケモン』、『ベイブレード』、『ONE PIECE』なんかが好きでした。
ですがおそらく、当時日本一といってもいいんじゃないか、というほどのクソガキでした。ここでは到底言えないような悪童っぷりを見せつけ、そのひとつが原因で小5のときに転校しています。
――最初にマンガを描いたのは、いつごろですか?
岡部 覚えているかぎりでは、小学校3年生のころです。文化祭のような企画で、生徒ひとりひとりがなんらかの出し物をしなくちゃいけなかったんです。
ほとんどの生徒は友人同士でチームを組んで、合同で出し物をしていたんですが、僕はチームを組めるような子どもではなかったので……絵を描いて展示しようとしていたら、「絵はダメ。せめてマンガにしなさい」と先生に怒られてしまって。
主人公が空賊王を目指す10ページくらいのマンガを描いて提出しました。これが、けっこう好評でした。
――漫画家を志したのは、いつごろですか?
岡部 だいぶ遅いと思います。18歳のころに初めてPCで絵を描いて、しばらくしてWEBマンガも描くようになったんですが、そのあたりから「ああ、一生マンガを描いていけたら、どれだけすばらしいことか」と思い始めました。
それまでも絵は描いてこそいましたが、漫画家になるっていうことは、それこそ「東大に入る」くらいの大それた目標としか感じられなくて、身近なものではなかったです。
――では、デビューの経緯は、どのようなものだったのでしょうか?
岡部 2011年ごろ、WEBマンガサイトの「新都社」で『世界鬼』を連載していたのですが、そのページにだれでも自由に感想をコメントできる欄があったんです。
そこに小学館の編集者さんが名前とメールアドレスを添えて、「電話ください」と……。「この人、大丈夫かな?」と思いながら、結局2カ月遅れくらいで連絡をとりました。そして小学館まで行って、「こういうマンガサイト(「裏サンデー」)を立ち上げるんだけど、『世界鬼』をリメイクして連載してみないか?」とお話をもらいました。
そこから現在に至るまで、ずっとマンガを描かせてもらっています。本当にありがたいです。
――今、現在は、どのような執筆スタイルで描いていらっしゃるのでしょうか?
岡部 プロットから下書き、作画、仕上げまで全部デジタル作業です。スタッフさんともオンラインでデータのやり取りを行っています。
生活スタイルは『世界鬼』のときは夜型だったのですが、今はいっさい休載を挟まない完全な週刊連載なので、スタッフさんとの連携をスムーズにするためにも昼型に直しました。
夜型生活につきあわせてしまうのが申し訳なくて、規則正しい生活をせざるをえなくなりました。
――週刊連載ですと、お休みもなかなかとれないかと思いますが、マンガから離れた時は、何が楽しみですか?
岡部 妻と散歩している時ですね。
――それはいいリフレッシュになりそうですね。ちなみに、岡部先生にとって漫画家の「ライバル」はいらっしゃいますか?
岡部 「このマンガがすごい!」1位をとった漫画家の方たちです。
――とくれば、今年の目標は……?
岡部 今年の『このマンガがすごい!』1位です。
――ありがとうございます。次は『このマンガがすごい!2017』ランクイン記念インタビューでお会いできるのを楽しみにしております! では最後に、『グッド・ナイト・ワールド』ファン、そして「このマンガがすごい!WEB」の読者のみなさんにメッセージをお願いします。
岡部 週刊連載だからというのもありますが、後ろを顧みる余裕もないほど全力で突っ走っている状態です。減速することももしかしたらあるかもしれませんが、振り落とされないようについてきてください。すみません、よろしくお願いします。
取材・構成:奈良崎コロスケ