日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『とあるおっさんのVRMMO活動記』
『とあるおっさんのVRMMO活動記』第2巻
椎名ほわほわ(作) 六堂秀哉(画) アルファポリス ¥680+税
(2016年3月31日発売)
ゲームをやっている時、最初に気になるのは「制限」と「自由度」のバランスだと思う。
やれることは当然決まっている。そのなかでどれだけ楽しめるか、何を目標に、モチベーションにするかは大きなテーマだ。
ヴァーチャルリアリティのMMOネットゲームを題材にしている作品。近年は特に『ソードアート・オンライン』や『ログ・ホライズン』など、体感型オンラインゲームがテーマの作品が増えている。
仮想空間の話だしさぞかし派手な展開が繰り広げられているだろう、と思いきやこの作品はひたすらに地味だ。
というのも、プレイヤーはいい年のおっさんで、そんなにログインできない。だからみんなとパーティーでびったりはりつけないので、ソロで、かつみんなにパーティーに呼ばれないような微妙なスキル選択をわざとしているからだ。
彼のプレイスタイルがとにかくユニーク。
取っておけば楽になるはずの「強スキル」をいっさい取らない。じゃあ彼の持っているスキルは、料理、蹴り、薬剤、木工……うん、単体だと強くない。
しかし彼は知恵を働かせて、いかに組み立てるかを論理的に考えていく。この試行錯誤の描写がワクワクする。
できる範囲で最大限のよさを引き出すのが、彼の遊び方なのだ。かなり現実に近い思考ゲームだが、こつこつ積み上がって完成するものはファンタジーな動きなのもまた、ゲームのおもしろさ。
第2巻ではMMORPGの大幅アップデートの話が描かれる。
スキルやバランス変更で、一気に引退する人が増える。最強を目指してスキルを磨いてきた人が、思いどおりにならないとなれば、それはしかたのないこと。
ただ主人公は、そこで臆することなんていっさいない。むしろそのなかで考えることを楽しんで、遊び方を模索する。
こつこつ型変態プレイをしていたら、目立たないようにしても目立つというもの。ゲーム内の妖精(AI)も寄ってくる。
このゲームどうも謎があるようだが、現在はそれよりも、「蹴りの威力をあげるにはどんな靴を作ればいいんだろう?」と頭をひねる彼を見ているほうが楽しい。
なおこの作品、原作の人気が高く、出版社のアルファポリスが、作中のゲーム『ワンモア・フリーライフ・オンライン』をブラウザゲーム化している。
<文・たまごまご>
ライター。女の子が殴りあったり愛しあったり殺しあったりくつろいだりするマンガを集め続けています。
「たまごまごごはん」