日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『響け!ユーフォニアム 北宇治高校吹奏楽部のいちばん熱い夏』
『このマンガがすごい!comics 響け!ユーフォニアム 北宇治高校吹奏楽部のいちばん熱い夏』 第1巻
武田綾乃(作) はみ(画)アサダニッキ(キャラクター原案)
宝島社 ¥660+税
(2016年9月8日発売)
強豪校だったが、弱小に甘んじていた京都府立北宇治高校吹奏楽部が、新しい顧問を迎え、復活を目指す──。
原作は同名の小説。京都アニメーションによりアニメ化され、劇場版も公開されている大人気作品のコミック版『響け! ユーフォニアム 北宇治高校吹奏楽部へようこそ』に続く第2シリーズ『響け!ユーフォニアム 北宇治高校吹奏楽部のいちばん熱い夏』の第1巻が満を持して発売された。
新顧問・滝昇の厳しい指導やコンクール出場にまつわる部内での軋轢など、不協和音もありながら勝ちとった関西大会出場。主人公である黄前久美子(おうまえ・くみこ)たちはつらい日々の先にある、もっともっと楽しく、うれしい瞬間を見つけた。
大会に向けて決意を新たにしていた久美子は、すでに吹奏楽部を辞めていたフルートの2年生である傘木希美(かさき・のぞみ)先輩が部へ戻りたいと、3年で副部長の田中あすか先輩に懇願している姿を見る。
しかしあすかはコンクールが終わるまで不可、とすげなく断る。一方で、オーボエ担当で2年生の寡黙な鎧塚(よろいづか)みぞれ先輩の様子がおかしい。どちらも、複雑な事情がありそう。
先輩たちの心のわだかまりに介入するのはハードルが高そうだが、それでも久美子は踏みこんでいく。流されがちだった彼女の成長がめざましい。
組織を辞めるのは、どんな理由であれ、しこりが残る。
結束を大切にする女の子が多ければ、なおさらだ。運動部並みの練習量を積みあげ、大ぶりな楽器を抱える彼女らは凛としているが、ひとりひとりがデリケートな芸術家であり、また思春期のさなかにいる。だからこそ、響きあう瞬間の気持ちよさも格別に違いない。
一致団結して最高の演奏をするために、楽器だけでなく、人間関係のもつれた糸もしっかりチューニングできればいいのだけれど……。
練習づけの日々の合間に、浴衣でお祭り、水着でプールなど夏らしいイベントもあり、「眼福」なのはもちろんのこと、開放感に浸る彼女らの姿にいやされる。
ちょっぴりサディスティックな高坂麗奈と久美子の絆は、さらに急接近したみたい?
いっそうの高みを目指すべく、ノイズを内包しながらも高らかに奏でるプレリュード。
まだまだ北宇治高校の熱い夏は始まったばかりだ。
<文・和智永 妙>
「このマンガがすごい!」本誌やほかWeb記事などを手がけるライター、たまに編集ですが、しばらくは地方創生にかかわる家族に従い、伊豆修善寺での男児育てに時間を割いております。