365日、毎日が何かの「記念日」。そんな「きょう」に関係するマンガを紹介するのが「きょうのマンガ」です。
9月6日は妹の日。本日読むべきマンガは……。
『さらば、佳き日』 第1巻
茜田千 KADOKAWA ¥650+税
本日は9月6日。なんでも、世間で活躍する女性の多くが「妹」であることを発見した「兄弟型・姉妹型」研究の第一人者でマンガ家の畑田国男が制定した「妹の日」らしい。
私も妹である。ひとまわりほど年の離れた兄が2人いる。
べたべたに甘やかされた記憶はないけれど、初めての携帯電話は兄からの高校入学祝いだった。学生時代の部活も「お兄ちゃんたちもやっていたから」とバレーボールを選んだ。幼い頃から、私の「年上の男の人」の基準は兄たち。
ブラコンではないけれど、大きな影響を受けてきた。
兄と妹のかたちはそれぞれ。とはいえ『さらば、佳き日』を読むと、とてもせつなくなってしまう。
兄の圭一は、ヘタレでビビり。妹の晃(あきら)は、クールでしっかり者。
3歳ちがいの2人は幼い頃からずっと仲よしで、周囲の目には「頼りない兄の世話を焼くしっかり者の妹」という関係がほほえましくうつっていた。
だけど2人は恋をしていて、お互いの気持ちにも気づいている。
大人になった2人はかけおちをして、ある地方都市で、新婚夫婦として暮らすことを選ぶ。
一見おだやかな2人の新婚生活は、終わりの予感に満ちている。絵で表現された心理描写は繊細で、そのぶんはかない。
恋愛マンガとして読めば、2人が初めて気持ちを通じあわせるシーンなどはときめきにあふれていて、心に突き刺さるほど印象的。
だけど、たとえば近視の圭一がメガネを外したとき、すぐ側にいる晃がぼやけて見える描写からは、2人の関係の危うさが伝わってくる。
恋が始まる時、その人の家族に生まれたかったと思うことがある。
楽しくて仕方がないつきあいはじめの時期でさえ、今どんなに好きだとしても、ずっといっしょにいれば、必ず恋は終わると、頭の片隅で自覚している。
だから、もしもその人が私の家族だったら、恋心なんて抱かずに、安心して側にいられるのにと願ってしまう。
ずっといっしょにいるためには、恋は邪魔なもの。そう思ってきたのに、生まれてからずっと家族としていっしょに過ごしてきた圭一と晃の恋心は消えない。
人を好きになることのときめきと苦しさが、兄と妹の恋からあぶり出されていく。
<文・片山幸子>
編集者。福岡県生まれ。マンガは、読むのも、記事を書くのも、とっても楽しいです。