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『艶漢』 第10巻 尚月地 【日刊マンガガイド】

2016/09/12


日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!

今回紹介するのは、『艶漢』


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『艶漢』 第10巻
尚月地 新書館 ¥590+税
(2016年8月10日発売)


艶(あで)やかな漢(おとこ)たちが、次々に登場する。だから、艶漢(あでかん)――。

本作に登場するのは、そろいもそろって妙な色気を振りまく男たちだ。
主人公となる傘職人・詩郎は、肌の8割を常に露出しており、下着は身につけないというポリシーの持ち主。そして、相棒となる巡査殿・光路郎は、鍛えぬかれた肉体と自覚のないタラシっぷりで女性をメロメロにする。
設定だけを見ると、かなりコメディ色が強いように思われる。しかし、その内容はかなりシリアスだ。

基本となるのは、グロテスクな猟奇的事件の解決。
夜毎現れる血まみれの花嫁、箱に閉じこめられた女の悲劇、水中劇の花形をかけた醜い嫉妬……。陰惨な殺人と、事件の裏に秘められた人間の欲望とを、詩郎と光路郎がバディを組み究明していくのだ。

そしてさらに、物語は詩郎の出自にも迫っていく。
一般人には無縁なスラム街で育った詩郎には、壮絶な過去があり、それゆえに現在も命を狙われている。しかし詩郎は、自身の過去をひた隠しにする。最も信頼のおける光路郎に対しても。
それは、彼を危険な目にあわせたくないから。

けれど、そんな生活も長くは続けられない。
第10巻では、過去を清算すべく、自身が生まれ育った街へと帰る詩郎の姿が描かれる。
これでもうだれにも迷惑をかけることはない。……はずなのだが、よそよそしい詩郎を心配して、光路郎がついてきてしまったからたいへんなことに。

ここでしびれるセリフが登場する。
それは、自分と死ぬ覚悟があるのか? と問いかけた詩郎に対し、光路郎がいい放ったこのひと言。
「それはないが、君と生きる覚悟なら、めいっぱいある」
常にひとりで生きてきた詩郎にとって、この言葉がどれだけ響いたことか……。

友情を超えた絆で結ばれた2人が、過去と向きあう姿が描かれる最新巻。
物語もいよいよ佳境を迎えたが、はたして2人は笑顔で日常に戻れるのか。
シリアス度を増した本作から、もはや目が離せない!



<文・五十嵐 大>
83年生まれの、引きこもり系フリーライター。デスゲーム系やバトルもの、胸キュン必至の恋愛マンガやBLまでたしなむ、マンガ好きです。マイブームは、マンガ飯の再現。

単行本情報

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