日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『ちいさい梅小路さん』
『ちいさい梅小路さん』
緒方波子 KADOKAWA ¥620+税
(2016年8月12日発売)
いわゆるお嬢様キャラというひと言では片づけられない、知れば知るほど味のあるヒロインが登場だ! 梅小路文子さんは14歳。
お育ちはいいようで礼儀正しいけど、ちょっとワガママで負けず嫌いだ。
少女マンガが大好きで、1番のお気に入りは、気高い王女様が活躍するドラマティックかつ華麗な王道系。書店員さんともツーカーの仲で、学校では“カルチャーリーダー”ぶりを発揮しているのだが、その地位を揺るがす転校生がやってきて……。
女子中学生にしてはマニアックなマンガの趣味を持つ小雀京子さんがみんなにちやほやされる様に、文子はイライラ!? 自信を打ち砕かれたり、簡単だと思った同人誌づくりに苦労したり……。
壁にぶつかりながら、少しずつ自分の幅を広げていく文子さんのかわいらしさに引きこまれる。
日々、文子に振りまわされているわりにはものわかりがよく、頼りになる弟君・一(はじめ)くんとのコンビも絶妙。
文子の憧れの少女漫画家の正体がインコだったりするシュールな設定も不思議とすんなり受け入れられてしまう。本人はいっぱしの大人のつもりだけど、ホンモノの大人の社会が部分的に見えていたり、いなかったり……そんな14歳のいたいけな感覚が刺さる、ミニマムなのに鮮烈な印象を残す物語だ。
<文・粟生こずえ>
雑食系編集者&ライター。高円寺「円盤」にて読書推進トークイベント「四度の飯と本が好き」不定期開催中。
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