日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『チヨちゃんの嫁入り』
『チヨちゃんの嫁入り』
伊藤ハチ 一迅社 ¥680+税
(2016年5月18日発売)
2人の距離はすぐそばにあるのに、大きな壁がある。その間に生まれた恋は、苦しい。
お嬢様と、その従者。
研究者と、研究対象。
15歳離れたお姉さん。
収録されている3編の百合物語は、いずれも難ありだ。
短編「主従百合本」は、病弱なお嬢様と、その屋敷の召使いとして働く少女リツの物語。
ある日体調が急変したお嬢様は、目が見えなくなってしまい、恐怖のあまり生きる気力を失い始めてしまった。
リツは彼女に言う。「お嬢様が回復されるまでの間 私を恋人にしてください」
かりそめの恋人になってから、お嬢様は気力体力ともに回復。視力も戻り始めた。
リツは彼女の復調を喜びつつ、苦しみを覚える。
恋人の時間は、もう終わる。気持ちがおさえきれない、もう召使いには戻れない。
歳の差恋愛を描いた「チヨちゃんの嫁入り」も、お姉さんに恋慕する少女の視点で描かれる。
いわゆる「おねロリ(お姉さん×幼女)」。
年下側から見ると、自分が一方的に好いているのがわかってしまうので、恋がかなわないのではないかという苦しみが常にまとわりつく。
しかし世界はそんなに厳しくない。
まっすぐな恋は、必ず届くのだと著者が信じて描いているから、読んでいて気持ちがいい。
ところでこの作品、どの短編も猫耳の女性が登場する。
むしろ耳がない一般の人は「ミミナシ」と呼ばれるくらい。
著者の『合法百合夫婦本』、『月が綺麗ですね』も猫耳。
並々ならぬこだわりには、どうやら訳がありそうだ。
<文・たまごまご>
ライター。女の子が殴りあったり愛しあったり殺しあったりくつろいだりするマンガを集め続けています。
「たまごまごごはん」