日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『菜々子さん的な日常REVIVAL』
『菜々子さん的な日常REVIVAL』 第4巻
瓦敬助 小学館 ¥630+税
(2016年8月12日発売)
「このマンガがすごい!WEB」でもたびたび著者インタビューを重ねてきた三部けい氏の大ヒット作『僕だけがいない街』最終巻が今年5月に発売されたのは記憶に新しいところ。
そして今夏にはまた、三部氏が「瓦敬助」名義で描き続けたもうひとつの代表作「菜々子さんの日常」シリーズが完結を迎えてファンの涙をしぼっている。
時は昭和のいつか、ところは北海道のとある高校。
ひとりの男子生徒が、学園生活のあいまにクラスメイトの女子高生・菜々子さんがうっかり引き起こすエッチなハプニング現場に偶然出くわし、ドキドキムラムラする様子を10ページ未満のショート形式で切りだす……本当に、ただ純粋にそれだけに徹した、いさぎよすぎるエロコメディである。
今でいう“ラッキースケベ”の一点突破だ。
本シリーズは、商業誌から同人誌までさまざまな媒体をわたり、単行本も『菜々子さん的な日常』『菜々子さん的な日常RE』『菜々子さ的な日常DASH!!』と続いてきた。その歳月、じつに18年!
そのなかから選りすぐりのエピソードをまとめたのが『菜々子さん的な日常REVIVAL』で、今回刊行された第4巻でそちらも幕引きになったしだい。
ミニスカセーラー服からぱっつんぱっつん発育した肉体がハミ出すのもかまわず、木登りや滑り台など小学生レベルの遊びに興じる菜々子さん。
毎回うっかり、下着はおろか乳やら尻やら放尿シーンまで見せてしまう彼女の姿は、性に多感な男の子の目を惹きこむ無防備さと、そんな目は度外視してあくまで自分の動きたいように身体を動かす華々しいタフさとが両立した不思議な趣がある。
主人公が菜々子さんのあられもない格好を目撃した時にいつも口にする「素薔薇(すばら)しい」という当て字は、そのあたりをいいえて妙だ。
ちなみに少年の名前は「瓦くん」。
つまりこれは作者が高校時代をなつかしむ回顧録でもあり、読者はそのしみじみした語り口をとおして、まるで菜々子さんが自分の過ぎ去りし青春の日々のなかにもいたような心持ちをかきたてられてくる。いや……こういう子、実際いたような気がするな……本当にいたんじゃないかな……いたいた、いたよ菜々子さんが僕のクラスにも!(錯覚です)
<文・宮本直毅>
ライター。アニメやマンガ、あと成人向けゲームについて寄稿する機会が多いです。著書にアダルトゲーム30年の歴史をまとめた『エロゲー文化研究概論』(総合科学出版)。『プリキュア』はSS、フレッシュ、ドキドキを愛好。
Twitter:@miyamo_7