365日、毎日が何かの「記念日」。そんな「きょう」に関係するマンガを紹介するのが「きょうのマンガ」です。
9月27日は日本人初のボクシング世界フェザー級王者が誕生した日。本日読むべきマンガは……。
『がんばれ元気』 第1巻
小山ゆう 小学館 ¥359+税
1968年9月27日、日本のボクシング界にビッグニュースが飛びこんだ。21歳の無名ボクサー・西城正三が、ロサンゼルスでWBAフェザー級世界王者と対戦し、まさかの判定勝ちを収め、ベルトを奪取したのだ。
日本人の世界王者はこの時点で6人誕生していたが、海外での世界王座奪取は初の快挙。フェザー級王者も初だった。
西城は日本での成績こそ平凡だったものの、武者修行先のロサンゼルスで才能が開花。現地での試合が評価され、世界戦への足がかりをつかんだものの、まさかの大金星。
帰国後はシンデレラボーイともてはやされ、甘いルックスもあいまって人気を博した(5度の防衛に成功)。
現在のプロボクシング全17階級中、軽い順から1「ミニマム」→2「ライトフライ」→3「フライ」→4「スーパーフライ」→5「バンタム」→6「スーパーバンタム」→7「フェザー」(57.15キログラム)となり、「羽毛」という名前のわりには軽量級の上位に位置するウェイトだ。
西城をはじめとして、これまでに5人の日本人王者を輩出しており、そのなかには先ごろ(2016年9月14日)WBC世界スーパーバンタム級王者に輝き、3階級制覇を成し遂げた長谷川穂積も含まれている。
『あしたのジョー』で一躍有名になったバンタムと並んで、日本人にはおなじみの階級だ(『はじめの一歩』-の幕之内一歩もフェザー級)。
このフェザー級ボクサーを主人公にすえて70年代後半から80年代にかけて人気を博したのが『がんばれ元気』。
主人公はシャーク堀口というプロボクサーを父親に持つ堀口元気。もともとシャーク堀口はライト級(61.2キログラム)のボクサーだったが鳴かず飛ばずで、31歳にして2階級下のフェザー級に転向。ここから堀口親子の運命の歯車が急速に動きだす。
シャーク堀口は17歳のホープ・関拳児との激闘が原因で絶命。
当時5歳だった元気は、関と戦うために一刻も早くフェザー級でプロデビューすることを胸に誓う。12歳の年の差はあるが、プロテストの受験資格を得られる17歳でデビューすれば、関は29歳。世界戦まで数年を要してもチャンスがあるからだ。
元気は名門高校に合格していたもの進学はせず、バイトで食いつなぎながら予定どおり17歳でプロデビュー。
ひとつ年上のライバル・火山尊らとの死闘を乗りこえ、ついに父を倒した関と世界戦のリングで対峙する――。
1976年から1981年にかけて「週刊少年サンデー」で足かけ5年にわたってひとりの少年の成長を追った、このみずみずしく胸熱なボクシングマンガは、コミックス全28巻の大河だが、このレビューを書くために再読したところ、あまりのおもしろさに5時間ほどで読みおえてしまった。
重厚な人間ドラマやマンガ的な嘘の少ないボクシング描写はもちろん、年上の芦川先生&同級生の石田ともこというWヒロイン・システムがすばらしい。
後にアイドルデビューする石田ともこもかわいいが、芦川先生の妖艶さたるや! 小学生のときに読んだドキドキがそのままパッケージされていて驚かされた。
2016年9月現在、フェザー級の日本人世界王者はいない。
西条正三や堀口元気のようなニュースターの誕生を切望!
<文・奈良崎コロスケ>
中野ブロードウェイの真横に在住。マンガ、映画、バクチの3本立てで糊口をしのぐライター。今秋公開予定の内村光良監督『金メダル男』の劇場用プログラムに参加しております。