日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『所得倍増伝説 疾風の勇人』
『所得倍増伝説 疾風の勇人』第2巻
大和田秀樹 講談社 ¥570+税
(2016年8月23日発売)
敗戦の傷もまだいえず、アメリカの占領下におかれたままの焼け野原である日本に、文字どおりゼロからの起死回生を目指して立ちあがった政治家・池田勇人の若き日を描き、連載開始時から大きな話題を呼んだ本作。
第2巻になっても勇人の勢いは止まらない。
いわゆる「東京裁判」を終えていよいよ独立の第一歩を踏みだした日本政界は、勇人の所属する「吉田学校」が総選挙で圧勝をおさめ、第3次吉田内閣において彼は大蔵大臣へと推挙された。
代議士となったばかりのいわば“1年生”が大臣になるのは明らかに異例なのだが、推挙した元日清紡会長・宮島清次郎と吉田学校のドン・吉田茂は、ある思惑をもって彼を連合国軍最高司令官総司令部(GHQ)経済顧問のジョセフ・ドッジにぶつけたのだった……。
さきの東京裁判をはじめ「ドッジ・ライン」や「シャウプ勧告」といった、歴史が苦手だった人にとっては頭が痛くなるような日本史用語が頻出するものの、それぞれを「大和田秀樹流」ともいうべきエンターテインメントにおとしこみ、ある種の説得力をもって伝えてくるのはみごとというほかない。
さて、第1巻のラストに「次巻の敵キャラですよ」とばかりにシルエットで登場していた毛沢東は本巻の後半で中華人民共和国を建国、「立てよ人民ッ!!」とどっかで聞いたようなセリフで気勢をあげる。
……が、彼らが勇人と日本の前に立ちはだかるのはもう少し先になりそうだ。なぜなら、その前にもう少し大きな舌禍事件が待っているから!
「貧乏人は麦を食え」、「中小企業の五人や十人自殺してもやむを得ない」といった名言(迷言?)で知られる池田勇人がこの先どう魅力的に描かれていくのか? 第3巻が楽しみで仕方がない!!
<文・富士見大>
編集・ライター。特撮のあれこれやマンガのあれこれに携わるほか、歴史ものもたしなむ。『手裏剣戦隊ニンニンジャー公式完全読本 天下無敵』や、ただいま絶賛発売中の『東映ヒーローMAX Vol.54』にも参加しています。