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『ものの歩』 第5巻 池沢春人(著) 橋本崇載(監) 【日刊マンガガイド】

2016/10/08


日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!

今回紹介するのは、『ものの歩』


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『ものの歩』 第5巻
池沢春人(著) 橋本崇載(監) 集英社 ¥400+税
(2016年9月2日発売)


テラスハウスの香りも漂う2015年型の将棋マンガが完結した。
主人公は人一倍努力家なのに、とにかく要領が悪い高良信歩(たから・しのぶ)。高校受験も第1志望校に落ちてしまい、家から遠い滑り止めの私立へ入学。しかも下宿先の手配に間違いがあり、将棋のプロを目指す奨励会員限定の下宿“かねや荘”に入居するハメに。

結局、なりゆきで将棋を覚えることになった信歩だが、要領の悪さがプラスに働き、「詰め将棋」で才能を開花。
ほかの住人と同じように(将棋を始めた初日に)「自分もプロを目指します」と宣言してしまう。

掲載誌は「週刊少年ジャンプ」。無趣味のさえない少年が、将棋の楽しさに目覚め、めきめき腕を上げていくという王道の展開だ。
もちろん個性的なライバルが次々に立ちはだかり、トーナメント戦にも矢継ぎ早に突入。不器用を個性に変え、戦術を矢倉にしぼって強豪を撃破するという設定は、将棋を知らない読者をもワクワクさせてくれた。

下宿先には下着姿でウロウロしている露出過多の奨励会員・風丘みなと(超美少女の15歳)もいて、ラッキースケベな読者サービスもたっぷり。
このまま人気爆発で空前の将棋ブーム到来か……と思いきや、まさかの連載終了だった。

終盤は大急ぎで風呂敷をたたんだ印象が強く、やや残念な最終巻になってしまったが、著者の池沢春人は「連載前から本当に描きたかったいくつかの話は満足が行くように描けました」(後書きより抜粋)と、悔いのない投了だった模様。

読者としては、キャラクターも出そろってきたし、「さぁ、これから!」という時期だったので、「もったいない」としかいいようがないのだけれど。
できることなら、いつの日かプロになった信歩たちが盤上で火花を散らす続編を読んでみたいものだ。



<文・奈良崎コロスケ>
中野ブロードウェイの真横に在住。マンガ、映画、バクチの3本立てライター。内村光良監督の話題作『金メダル男』の劇場用プログラムに参加しております。観てね!

単行本情報

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