日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『鳶田くんと須藤さん』
『鳶田くんと須藤さん』 第1巻
理央 秋田書店 ¥600+税
(2016年9月8日発売)
「話が通じない」
「病気なまでに嫉妬深い」
「好きな相手以外の風当たりが強い」
「自分のことを棚に上げる」
このマンガで書かれている、「ヤンデレ」の特徴だ。他にもめちゃくちゃたくさんあるので、ヤンデレチェッカーとして使えます。
女子高生・須藤凪子(すどう・なぎこ)の前に突然現れた、ビジュアル系イケメン成年、鳶田(とびた)。
開口一番「不っ細工だね」と吐きかけ、「俺が君の彼氏になってあげようか!」といい出す。
何いってんだコイツ。
通りすがりのいいがかりならまだよかった。
彼は須藤の個人情報を片っ端から調べ上げ、しつこく電話をかけLINEをおくり、部屋に盗聴器をしかけ、家にあげてくれないと脅迫をする。
須藤の近くに寄る人間すべてに攻撃的、アニメキャラにまで嫉妬する。
コメディタッチに描かれているが、かなりホラーだ。
須藤は交通事故で両親を亡くし、ひとり暮らし。だが第1巻前半、それに関わる話はいっさい出てこない。
むしろ鳶田があまりにも邪魔すぎて、意識は全部そっちに持っていかれる。
そもそも通りすがりに出会ったからといって、そこまでヤンデレになるのはおかしい。
中盤からは、須藤の親友で人を見る目が鋭い藤本梨果が登場、鳶田に疑惑の目を投げかける。
ひょっとしたら須藤の過去を知っているのではないか……?
なかば達観した須藤のキャラクターがおもしろい。
四六時中つきまとう鳶田のトンデモストーカーっぷりを、うまい具合に受け止めてしまえている(本人は望んでいないけど)。
彼がいつも部屋にあがりこんでいる状態は異常なのに、だんだん麻痺してきている。順応性があるというかなんというか。
ポイントになるのは、性的な関係がいっさい入りこんでいない点かもしれない。
第1巻は鳶田の異常性にスポットが当たっている。
今後は、なぜ彼が執着するのか、過去に何があったのか、須藤とはどういう関係なのか、次々に明らかになってくるはず。
<文・たまごまご>
ライター。女の子が殴りあったり愛しあったり殺しあったりくつろいだりするマンガを集め続けています。
「たまごまごごはん」