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『プリマックス』 第6巻 柴田ヨクサル(作) 蒼木雅彦(画)【日刊マンガガイド】

2016/10/14


日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!

今回紹介するのは、『プリマックス』


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『プリマックス』 第6巻
柴田ヨクサル(作) 蒼木雅彦(画) 集英社 ¥514+税
(2016年9月16日発売)


異色すぎるアイドルマンガ『プリマックス』単行本の最新第6巻が発売中である。

あらためて本作の筋を説明すると、体操選手・レスリング部員・柔道部員という経歴を持つ元・体育会系の高校生男子トリオが、とつぜん「カワイイ」という概念に目覚めて女装アイドルユニット「プリマックス」を結成し、観衆の前で様々なチャレンジをおこない知名度を上げていく……というものだ。

注目すべきポイントは、ここでいう「カワイイ」が、単にふわふわした、なよやかな属性ではない点。
アイドルが極める「カワイイ」を、見る者の心を強引にわしづかみにし、屈服させ、ひれ伏させる、ひとつの暴力として定義づけているところだ。
バトルマンガの「強い」をそのまま「カワイイ」に置きかえた、といういい方もできるだろう。

じっさい、最新巻でも、商店街でほかのアイドルユニットと出くわした主人公たちが因縁をつけあい、どっちがカワイイか勝負だ、と路上パフォーマンス対決を始めるくだりがある。
歌と踊りで観客を圧倒するライブと、拳と足で他人をうち倒すストリートファイトとが、ほとんど同じものとして描かれているわけだ。
そのあたりはまさに『ハチワンダイバー』で将棋&格闘というぶっとんだ組みあわせを見せた柴田ヨクサルが原作を手がけることによる、秀逸なコンセプト性といえよう。

さらに、本巻では無理やり主人公トリオのプロデュース役をつとめている超毒舌ひねくれ少女・ワルコの秘めた背景がとうとう明かされるのも見どころ。
ワルコの過去にからんで登場する、彼女の姉がまたなんともインパクト抜群である。

ワルコの姉は、セレブ特有の有閑から刺激を求めるお嬢様四天王のリーダー。
気まぐれで友人たちとアイドルグループを結成し、「敦盛」(人間五十年~と織田信長が舞うシチュで有名なアレ)を踊る動画で脚光を浴びてアイドル界へなぐりこんでくる。
初ライブでは観客から金を取るのではなく逆にひとり1万円配ることで場末の野外ステージに動員1万人を実現するなど、発想と実行力のスケールが劇中でも抜群の強敵として主人公たち……というかワルコの前に立ちはだかってくる。
ある理由で姉を憎悪するワルコがプリマックスとともに姉のステージに乱入し、負けたら脱衣という勝負をケンカとライブの同時進行で始めるさまはもはやアイドル云々が脇にふっとぶ奇天烈な思考と行動のグルーヴ感にあふれ、濃厚な“ヨクサル節”に酔いしれることができる。

というか、もはやここまでくるとアイドルものとかバトルものとか、「●●●マンガ」と分類するのが難しい次元ですらある。
いったいこの先、この作品がどこへ向かうのか!?
ますます目が離せない。



<文・宮本直毅>
ライター。アニメやマンガ、あと成人向けゲームについて寄稿する機会が多いです。著書にアダルトゲーム30年の歴史をまとめた『エロゲー文化研究概論』(総合科学出版)。『プリキュア』はSS、フレッシュ、ドキドキを愛好。
Twitter:@miyamo_7

単行本情報

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