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『漫画ルポ 中年童貞』 中村淳彦(作) 桜壱バーゲン(画) 【日刊マンガガイド】

2016/10/22


日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!

今回紹介するのは、『漫画ルポ 中年童貞』


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『漫画ルポ 中年童貞』
中村淳彦(作) 桜壱バーゲン(画) リイド社 ¥1,000+税
(2016年9月28日発売)


企画系AV女優のインタビュー集『名前のない女たち』シリーズで知られる中村淳彦が昨年刊行した問題作『ルポ 中年童貞』を、『絶望の犯島』(櫻井稔文・名義)でおなじみ桜壱バーゲンがコミカライズ。
タイトルどおり30歳以上の中年童貞にスポットを当てた作品だが、社会構造の深い考察や具体的な解決策が提示されている訳ではない。

中村は一時期、介護業界で働いており、そこに巣食う中年童貞たちに、ほとほと手を焼いていたそうだ。
だからして、まずは44歳・介護職員の壮絶な童貞のこじらせぶりからスタート。以降、高学歴の34歳童貞、ネトウヨの44歳童貞、アニオタの32歳童貞、AV男優の33歳童貞と、香ばしい案件が続々と登場する。熱量多めの桜壱画風がモチーフにぴったりだ。

本作に登場する中年童貞たちは自己愛の権化。彼らはみな一様に精神年齢が低く、プライドが高い。
そして人生中盤戦のいい大人なのに、自分のすべてを受け入れてくれる、天使のような女性が現れるのを待ち望んでいる。

ただ30歳以上の未婚男性の4人にひとりが中年童貞という現実をかんがみれば、必ずしも、そんな人ばかりではないだろう。
女性を必要以上に崇めたり、畏怖したり、見下したりしない立派な中年童貞だってたくさんいるはず。

だが、見合い結婚制度が廃れて以降、爆発的に増加した未婚の童貞たちが、年齢を重ねてコンプレックスを肥大化させてしまい、問題行動の契機になっているのも事実なのである。

中村の暴論に近い持論×桜壱のドギツいデフォルメで極端化した中年童貞像が羅列されているが、あくまで「こういうケースもある」という捉え方で読んでほしい。
お堅い言葉を並べてしまったが、小理屈抜きに「マンガ作品として抜群におもしろい!」ということも加えておきます。



<文・奈良崎コロスケ>
中野ブロードウェイの真横に在住。マンガ、映画、バクチの3本立てライター。内村光良監督の話題作『金メダル男』(10月22日公開)の劇場用プログラムに参加しております。観てね!

単行本情報

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