日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『のぼる小寺さん』
『のぼる小寺さん』 第3巻
珈琲 講談社 ¥590+税
(2016年10月7日発売)
ボルダリング大好き少女、小寺さん。
寡黙で、ちょっとミステリアス……に見えるけど、話しかけるとごく一般的な、気さくな女の子。
ボルダリングに思いを注ぐ熱血漢。とはいえ特殊能力があるわけではなし。
「ICO」大好きゲーマーで、特別な子というわけじゃない。
むしろ彼女の友人は「子どもみたい」だと言っている。
3巻は、彼女の周辺の人間にスポットが当たる。小寺さんに惹かれた少年たちだ。
卓球部の近藤くん。
周囲に名前も覚えられていないほど、影の薄い少年。
人間関係が苦手、上下関係やチームプレイが大嫌い。斜に構えた少年だった。
彼は、小寺さんがのぼる練習をしているのを見る。最初はスケベ心だった。
しだいに、恋にかわっていった。
彼女のがんばる姿を見て、いつしか自分も卓球を本気でやるようになった。
彼はいう。「がんばってたら クラスメートにも先輩にも嫌われなくなってきたし……案外そんなことでよかったのかも……」
中学生時代、小寺さんに告白をした四条くん。
内気で、「何の取り柄もない」と自己評価はあまりにも低かった。
彼女と一緒にいたいがゆえに、下心丸出しでクライミング部に入った。
のぼっているうちに本気になった。顔を覆っていた髪を切り、練習にも熱が入ってきた。
すると、無口なのは変わらないのに、周囲の人が話しかけてくるようになった。
先輩の宮路はいう。
「この先キミがどこへ行っても何を始めても「やる気」さえ見せていれば 誰もキミを見捨てないよ」
頑張りとやる気は伝染する。
やる気がある人は魅力的で、他の人をひきつける。
無邪気に楽しく、のぼるのが大好きな小寺さんから「やる気」の波はどんどん広がっていく。
小寺さんもまた、がんばっている人のことをちゃんと見てくれている。
近藤くんと四条くんは、3巻で初めて接触している。
小寺さんをめぐって恋のぶつかりあいがおきそうだが、2人とも今は自分と戦っている最中。
青春は、まずは自分と向きあうところからスタートだ。
<文・たまごまご>
ライター。女の子が殴りあったり愛しあったり殺しあったりくつろいだりするマンガを集め続けています。
「たまごまごごはん」