日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『KISS×DEATH』
『KISS×DEATH』 第4巻
叶恭弘 集英社 ¥400+税
(2016年10月4日発売)
これは、流刑地へ送られた際に脱走した5名の囚人たちと、それを捕縛しようとするひとりの刑務官との戦いを描いた物語だ。
ただし、“流刑地”とは銀河の超高度な文明からみた地球のこと。
囚人・刑務官の計6名は、全員が地球外生命体である。
彼らは豆つぶほどのサイズで、地球上ではなんらかの動植物に寄生しなくては活動できない。
囚人たちが憑依したのは5人の女子高生。
全てが平均以下のさえない存在だった少女たちは脳と肉体を支配され、人類最上位の知力・体力・スタイルを備えたスーパー美少女へと変貌。
それぞれがひとつの学校とその区域に住む人々を洗脳支配するボスになる。
一方、刑務官「Z(ズィー)」は、スクールカースト底辺の高校男子・戸津慎五(とづ・しんご)の肉体を手に入れる。
囚人たちが憑依した人間を特定し、そのボディから本体をひきはがして回収しなくてはならない。
まずはこちらの正体や動きをさとられないよう暗躍し、各個撃破していくのだ……。
本筋は以上のような骨太のSFサスペンス&アクションだが、宇宙人たちが寄生している箇所が舌先で、引き剥がすための直接コンタクトが傍目にはディープキスに見えるとか、宇宙人にとってはただの“乗り物”である女子高生がバトルの最中に乳やら尻やら下着やらがまる見えになってもおかまいなしだとか、エロコメ要素をふんだんに入れてサービス感もたっぷり。
「Z」の宿主・戸津少年は女性恐怖症の二次元オタクで、そのため囚人が駆る女子高生ボディとの接触やキス(敵本体の回収)には身体が拒否反応を起こすという“カセ”があるのだが、バトルで追いつめられた際に、その拒否反応で超人的な回避運動をおこなうなど、お色気シチュに対する弱点がバトルで強みに反転するのもおもしろい。
また、宿主には意識があり、宇宙人との精神内対話がひんぱんに描かれるので、それぞれの狙いや倫理観が活発に摩擦をおこして飽きさせない。
つまりこれは宇宙人・人間コンビ6組の総勢12名が折りなすドラマなのだ。
寄生型宇宙人と人間の関係を織りこんだ調査活劇といえば、ハル・クレメントの小説『20億の針』(別題『宇宙人デカ』・『星からきた探偵』)を古典とし、現在まで様々な角度から料理されてきた鉄板の様式。
それが、『エム×ゼロ』や『鏡の国の針栖川』など、主人公がなんらかの秘密を抱えて立場を偽ったり入れ替わったりする作品を描いてきた叶恭弘の作風とうまくかみあって怒涛の勢いが生まれている。
1~2巻では囚人ナンバー3を捕獲、宿主だった少女を協力者につけて、3巻では武闘派の囚人ナンバー2・千根谷(ちねや)ひなのと接触。
そして最新巻では、電気を操作して身体機能を増幅するスーツを装着したひなのの高い戦闘力に苦戦しながらも、知略をめぐらせてなんとか勝利。
その宿主もまた味方につけて一安心、と思ったら!? というイイところで次巻へ続く。
とにかく敵も味方も策士で、つねに計略をぶつけあって次々に状況が変わっていくため、読み始めると先へ先へと手が止まらない作品だ。
<文・宮本直毅>
ライター。アニメやマンガ、あと成人向けゲームについて寄稿する機会が多いです。著書にアダルトゲーム30年の歴史をまとめた『エロゲー文化研究概論』(総合科学出版)。『プリキュア』はSS、フレッシュ、ドキドキを愛好。
Twitter:@miyamo_7