日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『もぐささんは食欲と闘う』
『もぐささんは食欲と闘う』 第1巻
大竹利朋 集英社 ¥514+税
(2016年10月19日発売)
『もぐささん』シリーズの続編。きりがいいところなので、ここから読んでもまったく問題ないです。
百草(もぐさ)みのりは大学生になり、栃木県宇都宮から上京中。
派手でも地味でもない、ごくごく一般的な見た目の彼女。
本人曰く「誰もがドン引きする程のとんでもない食い意地女」。
百草さんは、間食を絶対しない、一日三食限定、と決意する。
彼女の一食は3人前から10人前。
欲望にまかせておくと、気づいたら延々と食べ続けてしまう。
平均的な「よく食べる」の言葉と、次元が違う。
新幹線で隣に座った少年が、彼女のひざにちょっとだけ生クリームをこぼしてしまう。
スイッチが入った彼女のなかから湧き上がる、止められない衝動。
「なめたい」
彼女、靴ひもを結ぶふりをして、ステルス舐めをする。
その後、大後悔。
百草さんは別にダイエットをしているわけではない。
異常な食欲が恥ずかしいから、「普通になりたい」から、我慢をしている。
今までの『もぐささん』では、食堂の息子・小口くんが、百草さんの理解者としていっしょに「食べ友」になってくれていたため、2人でいる時はとてものびのびしていた。作品としても、そんな百草さんを見守る視点で描かれていた。
しかし大学生になって離れ離れになったことで、視点も一人称視点にチェンジ。彼女が自分をいかに律するか、闘っているのかが描かれる。
彼女にとってこれは、修行だ。
ああ、がつがつ食べさせてあげたい!
彼女の食欲は、遠く離れた地で夢に向かってがんばっている小口くんへの恋慕と、とても似ている。
だからこそ、耐えようとする。耐えられる。
快感に震える子から、我慢をする女性のエロスへ。やっぱり百草さんはステキです。
<文・たまごまご>
ライター。女の子が殴りあったり愛しあったり殺しあったりくつろいだりするマンガを集め続けています。
「たまごまごごはん」