日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『いつかティファニーで朝食を』
『いつかティファニーで朝食を』 第10巻
マキヒロチ 新潮社 ¥560+税
(2016年10月8日発売)
近年ドラマ化もされ、ますます絶好調の朝食ガールズコミック『いつかティファニーで朝食を』の最新刊。
ついに米谷くんとゴールインしたリサの結婚式。
麻里子に栞、ニューヨークに旅立ったのりちゃんも一時帰国、久々に全員で顔を合わせた4人は、これまでの自分とこれからの自分について、あらためて思いをめぐらせる。
妙齢女子が恋愛・仕事・家族との関係など、それぞれに悩みながらもおいしいごはんを食べて元気になる――と書くと、ああ、よくある感じの……と思ってしまいそうだが、どっこい。
絵と語り口こそスイーツだが、じつはシビアなテーマが描かれているのだ。
本巻で印象的なのが、業界系のイケメンぞろいの合コンのエピソード。
いくら条件がよくて、話が盛り上がっても、それだけじゃあ恋には落ちないし、ましてや結婚にたどり着くなんて奇跡に近い――と愕然とするマリちゃんには、妙齢シングルならば、しみじみ共感せずにいられない!
結婚して安定した生活を過ごす栞、ニューヨークでの新しい生活に飛び込んだのりちゃん。
だれもがだれかと自分を比べては、このままでいいのかな?と焦ったり、迷ったり。
しょせん、ないものねだりだし、そもそも誰かと幸せを比べるなんてナンセンスだとわかっちゃいるけど。
それでも心の奥深くにたまったおりのようなものがモヤモヤと立ち上がってくる夜もあって、家には帰りたくなくてひとりで映画館のオールナイトに行ったら、同じような女性がちらほらいて――なんて、なんでもないエピソードも秀逸で、ふっと肩を叩かれる思い。
「くり返してるのは私だけじゃない」「朝ごはんを食べるように楽しく毎日くり返せばいいじゃん」というセリフには、男子もきっと感じるものがあるはず。
スイーツな女子マンガとスルーしていたら、もったいない!
<文・井口啓子>
ライター。月刊「ミーツリージョナル」(京阪神エルマガジン社)にて「おんな漫遊記」連載中。「音楽マンガガイドブック」(DU BOOKS)寄稿、リトルマガジン「上村一夫 愛の世界」編集発行。
Twitter:@superpop69