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11月13日は日本のプロ野球が一時的に休止した日 『アストロ球団』を読もう! 【きょうのマンガ】

2016/11/13


365日、毎日が何かの「記念日」。そんな「きょう」に関係するマンガを紹介するのが「きょうのマンガ」です。

11月13日は日本のプロ野球が一時的に休止した日。本日読むべきマンガは……。


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『アストロ球団』 第1巻
遠崎史朗(作) 中島徳博(画) 太田出版 ¥1,900+税


太平洋戦争の戦局が悪化し、敗戦の足音が重く響きはじめた1944(昭和19)年11月13日、「日本野球報国会」は国内プロ野球活動休止の声明を発表した。

1936(昭和11)年に設立された「日本職業野球連盟」は当初7球団で発足、のちに9球団に増えて「日本野球連盟」と改称するも、日中戦争に由来するアメリカとの関係悪化にともない野球は「敵性競技」とみなされるようになり、1940(昭和15)年には球団名や野球用語の日本語化が始まった。
「ストライク→良し1本」「スリーストライク・アウト→良し3本・それまで」といういい換えでおなじみのアレである。

国威発揚のため日本野球報国会と改名した同連盟が活動休止となった理由のひとつには、プロ野球選手の多くが軍に招集されたことがある。
若く身体能力にすぐれた彼らはすなわち有能な戦闘員でもあるとされたのだ。

東京巨人軍(現・読売ジャイアンツ)の投手・沢村栄治もそのひとり。
厳密には現役引退後の応召でフィリピン戦線に向かっていた1944(昭和19)年12月2日、乗船していた輸送船が撃沈され、彼は27歳でその生涯を終えた。

そんな伝説のピッチャーの遺志をつぐ9人の男たちが「一試合完全燃焼」をモットーに打倒読売巨人軍そしてアメリカ大リーグを目ざし戦う物語が『アストロ球団』だ。

かの「週刊少年ジャンプ」に1972年から連載開始、4年間・全183話にわたって“野球で戦う”アストロ超人たちを描いた本作は、魔球や必殺技を操る野球選手たちが試合という名のデスマッチを繰り広げる、元祖「ジャンプ」バトルマンガともいうべき怪作にして傑作。
死者・廃人も続出という刺激的な展開は、当時のボンクラキッズをとりこにした(むろん筆者もそのひとり)。「ジャコビニ流星打法」、「三段ドロップ」といった技名には、言葉の意味はわからんがとにかくスゴイ技なのだけは語感だけでもわかっちゃう説得力があるから不思議だ。
2005年にはどういうわけ……というか当然というべきか、テレビドラマにもなってカルト的人気が盛り上がったことも記憶に新しい。

内容はいささかふざけたように書いたが、『南総里見八犬伝』に着想を得たとおぼしき運命の9人の出会いや友情・努力・勝利といった「週刊少年ジャンプ」の三大原則をすべて盛りこんだストーリーは、いま読み返しても非常におもしろく、血がたぎる。
昨今のややぬるめなバトルマンガに食傷気味の諸兄にはぜひお読みいただきたい逸品なのである。

さて、東京都文京区にある「東京ドーム」敷地内には、太平洋戦争などで戦死した日本プロ野球選手の功績を記念する「鎮魂の碑」がある。
戦争が終わって七十数年、この記念碑にきざまれた選手たちはいまの平和なプロ野球界をいかに思うだろうか?



<文・富士見大>
『南総里見八犬伝』は日本史上最高の伝奇ノベルと信じる編集・ライター。特撮のあれこれやマンガのあれこれに携わる。最近作は『「仮面ライダー」超解析 平成ライダー新世紀』「東映ヒーローMAX Vol.54」。間もなく発売の『「ウルトラマン超解析」大怪獣激闘ヒストリー!』にも参加しています。

単行本情報

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