日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『野球+プラス!』
『野球+プラス!』 第1巻
石田敦子 少年画報社 ¥575+税
(2016年9月30日発売)
今年の広島カープの快進撃とリンクするかのように絶好調!
『球場ラヴァーズ』シリーズでおなじみ、様々な角度からカープ女子を描き続ける石田敦子の新作は、新米・女子スポーツ記者の奮闘記だ。
野球バカで極端なカープ女子の山口由右(やまぐち・ゆう)は、ド天然のドジっ娘。
しかし、その圧倒的な熱意に面接官たちも押されまくりで、なぜかかの「スポーツニッポン新聞社」に採用されてしまった!
「野球が好き、カープが好き」という一念だけで夢の一歩を踏み出した由右。
スコアのつけ方も知らずに周囲に呆れられたりもするけれど、根っこには、「こんな記事を書きたい」という確固とした理想を持っていて、ときどきハッとさせられる魅力的なヒロインだ。
スポニチ誌全面協力ということで、我々の知らないスポーツ記者の取材の様子、記事の書き方など現場のリアルが織りこまれているのも楽しみどころ。
毎日初めての体験をするたびに何かに気づいて、自分のなかに新しい視点を育てていく。そんな由右の胸の高鳴りに読みながらシンクロしてしまう。
今は東京在住だがかつては広島に住んでいて……一家そろってカープファンである山口家のドラマも物語の軸だ。由右とは違って堅実派、ベースボールマガジン社に勤める姉の亜左、そして野球に情熱を注いでいた弟・堅太郎のエピソードもこれから少しずつ開示されていくのであろう。
あらためてスポーツのよさに、もっといえば躍動する生命の尊さに感動を禁じえない。
すべてのカープファン、野球ファン、スポーツファン、そして「人が好き」な人に読んでもらいたい作品だ。
<文・粟生こずえ>
雑食系編集者&ライター。高円寺「円盤」にて読書推進トークイベント「四度の飯と本が好き」不定期開催中。
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