365日、毎日が何かの「記念日」。そんな「きょう」に関係するマンガを紹介するのが「きょうのマンガ」です。
11月16日は幼稚園記念日。本日読むべきマンガは……。
『怪人ようちえん monster's kindergarten』 第1巻
新貝田鉄也郎 集英社 ¥600+税
あなたがアーノルド・シュワルツェネッガーのファンなら、シュワちゃん演じるコワモテの警官が潜入調査のため幼稚園の保父さんになってドタバタする映画『キンダガートン・コップ』(1990)をご存じだろう。
そのタイトルにある「キンダガートン」(kindergarten)は幼稚園をさすが、これはドイツ語でいう「キンデルガルテン」の英語発音。
英単語に換えればkidsのgarden=「子供の庭(国)」という意味になる。
「キンデルガルテン」自体は19世紀前半のドイツの教育学者・フレーベルの造語であり、彼が1840年に設立した幼児教育のための学校が、近現代における幼稚園の大きな基礎になっている。
日本では、1872年に国が公布した学制のなかで、小学校に上がる前の子供を教育する学校を想定した「幼稚小学」という概念が登場。
1875年には国内初の幼稚小学校として京都に「幼穉遊嬉場(ようちゆうぎじょう)」が設立されるも、あいにく2年弱で頓挫した。
そして翌1876年の11月16日、東京の神田にて、上流家庭向けの立派な設備と本場ドイツから招いた教師を揃えた「東京女子師範学校附属幼稚園」が開園。日本で初めて「幼稚園」という呼び名を掲げた施設が誕生した。
これがやがて「お茶の水女子大学附属幼稚園」になり、最古にして現役のエリート幼稚園として今なお貫禄をみせている。
その開園日を由来とするのが「幼稚園記念日」というわけだ。
さて、そんな本日、幼稚園を舞台にしたマンガとして『怪人ようちえん monster's kindergarten』を取り上げたい。
とある町はずれでひっそり営まれている、私立並都幼稚園(へいとようちえん)。
見かけは地味で平凡な園だが、その正体は悪の秘密結社ヘイトロンによって生み出された異形の子どもたちを心身ともに立派な怪人になるまで育成するための、闇の教育機関だった。
今またひとり、新たな怪人少女、コウモリの羽根を背にはやしたコウモリエンジ・小森こえが「怪人ようちえん」に入園する。
改造手術に時間がかかって12歳になってしまったが怪人としては何も知らない未熟なこえ。
彼女に声をかけたのは、小さな身体で大きな態度がふてぶてしい、クモ糸使いのクモエンジ、出雲いと。
生意気でケンカっ早いが、友だち思いのきっぷのよさで園のムードメーカーなクモ型怪人幼女だ。
いとの夢は、新たな大首領の座につくこと。
「最初に出てってやられる役だろクモって」と『仮面ライダー』的ツッコミをくらいながらも野心を捨てないいとは、コウモリエンジを第一の部下にすると宣言。
上官をきどっていきがるいとがかわいく思えたこえは、園のなかでも外でも2人仲よくつるむようになる。
かくしてきょうも怪人ようちえんの子どもたちは、それぞれの個性をぶつけあいながら、勉強に遊びに元気いっぱい、大人(怪人)への階段をゆっくり上がっていく……。
大首領をトップにかかげる組織構造が描写され、園内で繰り広げられる子どもたちのケンカが悪の組織の幹部同士による対立の小型版のように仕立ててあったり、随所で特撮的な世界観がにじんでいる。
いわゆる「モンスター娘」の人間的女体化とは系統が異なり、あくまでもともと人間ベースの●●男・●●女が属する怪人組織を描いているのが特徴だ。
著者・新貝田鉄也郎氏はロリ系アダルトマンガで長くキャリアを積み、また怪獣のイラストや特撮ヒーローのキャラデザインを手がけたことでも知られるベテラン作家。
そんな氏が、幼女+怪人という強みを同時に活かして、初めて非アダルトの一般マンガを連載、単行本化された本作だが、じつはちょうど明後日18日に1年ぶりの続巻となる第2巻が発売を迎える。
なので、まずは本日「幼稚園記念日」にちなんで第1巻を読み、さらにその勢いで続きを追うという流れをおすすめしたい。
<文・宮本直毅>
ライター。アニメやマンガ、あと成人向けゲームについて寄稿する機会が多いです。著書にアダルトゲーム30年の歴史をまとめた『エロゲー文化研究概論』(総合科学出版)。『プリキュア』はSS、フレッシュ、ドキドキを愛好。
Twitter:@miyamo_7